文部科学省「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」の取り組みに向けて


<< 背景 >>
 岐阜県教育委員会では、変化の激しい現代社会を子どもたちが主体的に生き抜いていくためには、基礎的・基本的な知識や技能、自ら課題を見つけ解決する力やコミュニケーション能力、将来を切り開くたくましさなどを育成することが大切であると考え、きめ細やかな教育を行うべく努力をしているところである。 しかしながら、本県においても少子化に伴い、学校規模が小さくなることにより、子どもたちの教育環境や質の面で、標準規模以上の学校との間に格差が生じてきているのではないかと危惧されている。
  そういった課題を解消するツールのひとつとしてICTの活用を考えており、文部科学省委託事業「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」に取り組むこととした。

<< 実証地域及び実証研究校の選定 >>
 実証地域として、以下を留意して選定した。
 ・教育委員会がICTの活用を積極的に検討していること
 ・市町村教育委員会が中心となって、ICTを活用して複数校を接続して授業を行った実績があること
 ・過小規模小学校(5学級以下)が複数あり、かつ、適正規模小学校(12~8学級)があること
 以上の条件から、これまで岐阜県教育委員会のTV会議機器を活用し、ICT教育に積極的な姿勢を示してきた本巣市を実証地域として選定した。

<本巣市小学校の現状>
 本巣市の公立小学校は8校あり、その内訳は過小規模校2校、小規模校2校、適正規模校3校、大規模校1校となっている。
<実証研究校の指定>
 [過小規模校]  根尾小学校・・・学級数 4  外山小学校・・・学級数 5
 [適正規模校]  本巣小学校・・・学級数14


<< 本巣市の小学校における遠隔授業の活用と課題 >>
 平成26年度末には、根尾小学校と外山小学校の6年生を対象とした中学校への良きつなぎのための教育として、「中学校数学の授業を体験しよう」という合同授業が行われた。中学校の数学担当の教員が根尾小学校で授業を行い、外山小学校の児童とはテレビ会議を通して双方向の授業を実施した。両校の児童は、お互いに思考した結果を発表し合い、認め合うことで社会性を育むとともに、中学校での学習に対する不安を軽減する一助となった。
 しかし、これまでの取組では、2校の遠隔授業に対して、5~6名の教員が関わっており、黒板に掲示した資料をTV会議で電子黒板に写すだけでは「見えにくい」ということで、教員には大きな負担を負わせることとなった。遠隔授業においてICTの日常的な活用を可能にするためには、担任と補助者1名でも活用できるものとする必要がある。

<< 事業の目的・目標 >>
 本事業では、「いつでも、どこでも、手間なく活用」を合言葉に、ICTを活用して異なる学校の教室間を接続し「多様な学習機会の提供」と「教授活動の質の向上」にかかる、指導方法や研修方法等の充実のために以下の点について研究する。
 ①小学校における同一の学年・学級をICTで結び、1年間を通した各教科での授業
 ②ICTを活用した授業における主体的・協働的な学び
 ③本事業を実施するために必要な教員研修
 ④ICT 機器やネットワーク環境の構築・運用の技術的条件

具体的には、根尾小学校、外山小学校、本巣小学校をICTで結んで、
 ○少人数どうしが机を並べているかのような感覚で学習できる環境を構築する。
 ○双方向の交流を通して、同学年の児童どうしが協働学習を行うことで、社会性を育む活動に取組む。
 ○各教科で児童が思考した結果を共有する場面や協働学習を通して、多様な関係のなかで、お互いに切磋琢磨しながら高め合うことができる授業モデルを作成する。
 ○遠隔授業における教員の役割と有効な指導方法を検証する。
 ○ICTを活用した教員の研修や連携の方法を検証する。
 ○遠隔授業で活用できる教材の作成を行い、共有するための方法を検証する。
 ○小学校から中学校への接続をスムーズに行うために、Web会議を有効に活用して中学校の授業体験や児童・生徒の交流に取組む。