文部科学省「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」における成果と課題


<< 平成27年度の成果と課題 >>
 11月からの短い取組期間のなかで、教員が遠隔授業におけるICT機器の活用に慣れることが必要であり、様々な教科、学年で実践しながら、学校間を接続した協働学習における効果的なICT機器の活用方法について模索してきた。  これまでの実践を踏まえ、「第2回実証研究委員会」で確認された成果と課題は以下のとおりである。

○児童の学びについて
 児童のICT機器への対応の早さには目を見張るものがあり、数回の接続で自然に反応しあうことができるようになり、2校での話し合いが成立したことで、自校だけでは得られない多様な考えに接することができた。また、公の場で意見交換する経験の中で「相手に伝える」、「相手から学ぶ」、「相手から聞く」といった意識を持つことの大切さを学び、また、違う環境の学校同士がつながることの意義を感じることができた。
 しかしながら、今回の5年生は宿泊研修等を充実させるという共通の目的に向かって取組むことができたが、その他の学年について、学びの必然性をもたせることが必要である。そのために、児童が「他校の意見を聞いてみたい」と思えるような授業をデザインすることが必要であるとともに、その想いに互いの学校が応えられる体制を作ることができるかが課題である。

○教員のICT活用について
 回を重ねるごとに遠隔システムに慣れ、授業がスムーズになってきた。遠隔授業を通して、教員同士が連携することにより、ICTを活用した授業力の向上が図られていることを感じる。  しかし、当該事業に係わる教員が中心となるため、各教員の意識とスキルに差があり、教員全員がWeb会議システムやタブレットPCを効果的に活用できるとは言えない。今後、組織的なスキルアップをどのように行うかが課題である。

○使用機器について
 電子黒板でWebカメラとデジタル教材等の表示を切り替えながらの授業展開が可能となり、課題であった教材の提示方法について、以前のTV会議と比べて効率的になった。また、ICT支援員に機器の操作を任せられることで、教員が授業の進行に集中でき、機器の操作で授業の進行を止めることが少なくなった。
 しかし、電子黒板が全教室に整備されておらず、移動と準備に時間と手間がかかることや、各学校に整備した2台のタブレットPCを3校で効率よく活用することはできるが、その度に設定に手間がかかる。各学校ともグループに1台の機器が整えば、手間なく様々な授業を展開することが考えられる。また、整備したWebカメラは広角であるが、方向を変えることができず、ズーム機能が短距離でのリモコン操作であるため、写したいものに素早く対応することができない。今後の授業展開を考える上で、児童と教員それぞれを写せる環境を整えられるとよい。