揖斐郡坂内村立坂内小学校と大垣市立東小学校は、平成7〜9年度の3年間、文部省指定による「へき地学校高度情報通信設備(マルチメディア)活用方法研究開発事業」の研究を進めてきました。指定が延長され、平成10年度も研究を深めているところです。
この研究の目的は、山間部の小規模学校と遠隔地にある都会の大規模学校とを光ファイバーで結び、テレビ会議システムを導入して同時に2校が一体感のある共同学習を実施するものです。従来の固定概念を破り、TTによる授業改善を発展しつつマルチメディア機器を有効に活用して、児童の姿や音声、文字、ビジュアルな資料等の映像をリアルタイムに双方向から送る授業の実践、研究をしようとするものでした。
新たな機器導入や授業の準備、授業形態の変化に、最初はとまどいもありましたが、現在では幾多の難点を克服しつつ、両校児童の一体感ある授業展開になってきました。
坂内小学校は今まで、「小規模、少人数であるが故に出来る教育」を求め教育活動を行っていましたが、一方で少人数であるが故に出来ない活動もあることは否定できません。大垣市立東小学校とテレビ会議で共同学習を進めてきて、子供達は今までなし得なかった多くの仲間との学習をする良さを知り、喜びを味わい、生活に活力が見られるようになってきました。例えば、子供の発言が長くなった、結論を言うだけであった子供が理由や根拠・立場等を述べるようになった、さらに反論をするようになった等、自然な形で大勢の子供達との交流を通して学ぶことが出来ました。
大垣市立東小学校でも、「いろいろな考えが出るし、質間し合ったり、教え合ったりできた。」「お互いの地域のことを学習して、興味が持て集中できた。」「相手によく分かってもらうためにはどんな話し方をしなければいけないかが、よくわかった。」など、大部分の児童がこのような感想を寄せ、授業を楽しみながら確かな変容を見せてきました。
共同学習を通して、学習素材を他地域と自分の地域とでリアルタイムに比較して、郷土の良さを知り、郷土を大切にする芽が育ってきたことを感じます。相手校への情報を発信するために多くの情報の中から、何を、どのように整理するのか、また、相手校から得た情報の中で自分に役立つものは何か等、情報を取捨選択する力も育ってきました。
また、職員も、例えば教材研究が複数の教師により実施されることから内容に深さや広がりが見られたり、子供を観察する目が変容したり等、研修としての効果も見られます。
こうして研究的な共同学習の実践を深めることにより、
- 多数の児童の中で自分の考えを発表したり、練り合ったりする活動を通し、一人一人の表現力を育てる。
- お互いの地域の特色を交流・比較することによって、より豊かでリアリティに富んだ情報を得て学習に役立てる。
- マルチメディアを活用した情報教育の在り方を研究する。
という所期の目的達成への確かな歩みを感じ取ることができました。
こうしたことは、マルチメディア機器を通し、しかも大勢の子供達との交流をしたことでしか出来なかった成果のように思えます。
平成10年度も指定が延長され、子供達が明日の郷土の新しい文化を創造する力や主体的に逞しく生きる力を身に着けてくれることを念願し、研究を深めているところです。
揖斐郡坂内村立坂内小学校
大垣市立東小学校
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