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7.実施した授業の概要(8)


第4学年 社会科 各地のくらしと私たちの国土−山地の人々のくらし−

1.指導の立場
(1)単元について
 日本は南北に細長い島国であるため、地形や気候の条件から様々な特色ある地域があり、そこでは、人々がその土地の環境に適応しながら生活している。4年生では、まず地形のちがい、主に土地の高低による特色に目を向け、それぞれの地域における人々のくらし、自然への適応の工夫を学ぶ。続いて気候の寒暖に応じた人々のくらしについての学習を行う。
 「山地の人々のくらし」では、山地にくらす人々の生活や自然環境の様子に関心を持ち、広い視野から地域社会の生活を考えることをねらいとする。坂内村は、濃尾平野の西北に位置する揖斐川の支流にそった山村であり、教科書で取り上げられている高知県池川町と多くの共通点がうかがえる。「山地のくらし」を示す写真や資料は都市部に住む子供たちの目には新鮮に映るであろうが、山村に住んでいる子供たちにとっては、ごく当たり前のことであり、かえって何が特色であるのか気づきにくいことである。そこで、まず池川町と自分たちの坂内村を比較し、類似点を見つける形で、山地のくらしの特色を確かめたい。そして実際に村内を歩いてまわり、家族や地域のお年寄りの方にインタビューするなどして、自然に適応していこうとする人々の知恵や、生活をよりよくしていこうとする人々の営みを理解することをねらいたい。
 また、学習を通して学んだこと、つかんだことをマルチメディア機器を活用して資料を作成し、東小学校の仲間に「自然を活かす坂内村のくらし」といった内容のレポートを送り、学習のまとめとしたい。

(2)児童の実態
 男子2名、女子4名の計6名と少人数であるが、見学や調べ学習に意欲をもって取り組むことができる 児童が多い。社会科の学習の流れとして、調べたいことを考え、自分たちで役割を分担し、歩き、見学してインタビュー、見学のときにとったデジタルカメラの画像をもとにわかったこと、見つけたことをB紙やA4サイズの用紙にまとめておいて東小と交流するといった活動が定着しつつある。
 はじめのうちは、調べに出かけても、何をメモしたらよいのかわからなかったり、用意しておいた質問をするのがやっとという感じであったが、学習を積み重ねるたびに、ポイントを落とさず見学したり、ねらいにそった質問ができるようになってきたと感じる。学習したことのまとめ方についても、東小との交流を意識し、相手にわかりやすく、絵や図をかいてまとめることに慣れてきた。
 今回、学習する「谷水」について子供たちは、「坂内を流れる川の水はきれいだ。」「夏には泳げるし魚もいっぱいいるのでうれしい。」「かごにいもを入れて流れの中に入れておくと皮がとれてきれいになる。」「家や学校で使っている水は谷水をきれいにしたものだ。」といったとらえをしている。事実についてある程度の認識はあるが、そのことが、山地ならではの特色をうまく生活に活かしたものであるといった認識は薄いと思われる。調べ学習や村の方へのインタビューを通して、坂内にくらす人々の工夫や知恵をつかませたい。
 課題としては、少人数なために、資料をもとに考える場での深まりが十分とは言えないことである。一つの疑問に対して一つや二つの答で満足するのでなく、もっと別なものはないかと考える力を養いたい。今回の学習においても、山地である坂内村の生活の工夫や良さをたくさん探し出し、東小学校の仲間とともに学ぶ中で考える力を育てたい。

2.研究主題との関わり
 4年生の社会科にかかわる「研究主題でねらう具体的な児童の姿」は、次のようである。
@ 大勢の児童の中で自分の考えや調べたことを堂々と話し、いっしょに考えることができる。
A お互いの地域の特色を交流、比較することを通して自分たちの地域についてよりよく理解する。
B 情報交換に適切な資料を作成し、マルチメディア機器を用いて活用できる。

 常時、同一の少人数集団で生活、学習を進めていると、ものの見方や考え方に深まり、広がりが乏しくなりがちである。社会科の学習においては特に、資料をもとに考える場や調べたことのまとめや発表を行う場で、その傾向を感じる。 特に、今回の「山地の人々のくらし」の学習は、2.で述べたように、自分たちが、普段当たり前に思っているくらしを取り上げるようなもので、かえってその特色をつかみ、考えを深め合うのはむずかしいと言えるだろう。ところが、知っているようで実はよくわかっていないことは、普段の身近な生活の中に多い。
 東小学校の仲間に、大垣から身近な「山地のくらし」として坂内村のくらしの様子を伝える学習を仕組むことで子どもたちが「相手が知らないことについて詳しく調べてみたい。」と思い、「調べたことはわかりやすく伝え、質問されたら答えたい。」と思うことを願う。(ねらう姿@)また、それは東小学校の児童にとっても、身近な仲間から、知らないことについて生の情報を得られる場となり、学習意欲の向上につながることと考える。
 東小学校のある大垣市は、平野部に位置し、交通の便も非常によい。一方、坂内村は大垣市からわずか数十キロメートルしか離れていないが山間部に位置し、谷川に沿った1本の国道沿いに集落がある典型的な山村である。東小では、この身近にある「山地の人々のくらし」を学習の素材として学ぶのであるが、地形、気候、産業、交通など要素はいくつもある。
 そこでまず、坂内より、いくつかの資料を大垣に送り、それをもとに東小の児童が自分たちで課題をつくり、自分たちの地域のくらしとくらべながら学習する。そしてテレビ会議システムを通しての交流授業の中で「山地(坂内)のくらし」の特徴としてつかんだことを発表し、確かめるとともに、疑問点などはその場で質問し解決していく流れを仕組んでみたい。一方、坂内では、自分たちの地域のことであるので、既習事項については、質問に答えられる準備をしながら、新たに「水」をテーマに設定し、人々が、山地ならではの豊富で流れの速い水、美しく温度の低い水を生活にどのように活かしているのかを調べ発表する方法を考える。大垣は、「地下水」を生活に利用してきた地域であるので、山地の人々の「谷水」を活かすくらしの工夫を自分たちの生活とかかわらせながらの学習も期待できる。(ねらう姿A)
 今回は、特にマルチメディア機器だからこそできる資料の提示、つまり、図書館の本や資料を見ているのと変わらないものではなく、動きがあったり、インタラクティブなものを目指したい。また、児童が自分の発表したいことは、どの機器を使ったら一番わかりやすく伝えられるかを自分で考え、道具として機器を扱えることを目指して指導したい。(ねらう姿B)

かやぶきの家の見学(広瀬地区にて)谷水を生活に活かす(川上地区にて)

3.単元指導計画
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4.本時の目標
・山地にくらす人々が、地域の特色を活かして生活をよりよくしようと取り組んでいることについてつかんだことを発表・交流して、より深めることができる。
・山地の特色のひとつである、豊富で流れが速く冷たい水を生活にいかす坂内のくらしの様子について調べたことを東小の仲間にわかりやすく発表できる。

5.本時の展開(7/8)
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6.授業後の考察
(1)児童の姿について
<成 果>
・山地の特色を調べるにあたり、家族や近所の人に尋ねたり、生活に使う道具を写真にとってくるなど意欲的に活動し、進んで調べる力をつけた。
・つかんだことを東小の仲間(知らない人)にわかりやすく伝えるために、その方法を考え、資料づくりをすることができた。
・相手を意識して話すことを心がけ、書いた文を読むのではなく、画像や資料を示しながら、それに合わせて話すことができた。
<課 題>
・今回は「山地の人々のくらし」を東小へ情報発信することがメインであったので、坂内側から東小に向けて質問する場が少なかったが、そのような場において、要点を落とさず、的確な質問をし、知りたいことを聞き出す力を育てたい。
・気軽に児童同士がお互いに声をかけあって、授業を進める雰囲気を作り、インタラクティブな面を大いに活かしていきたい。

(2)機器の活用について
<成 果>
・児童が自分たちで資料提示に最も適する機器を選び、それを道具として使えるようになった。
・VTR・デジタルカメラ・書画カメラ・後方カメラなど、それぞれの特性を活かす使い方を研究することができた。
・映像による資料は、画面から消えると残らないという欠点を補うために、書画カメラで提示した資料や、デジタルカメラの画像などを前もって東小に送っておき、授業中に相手校でも提示できた。
<課 題>
・個別に質問したいことがあるときなど、パソコン通信(フェニックス)を利用するなどして、多くの意見交換ができるように機器を活用していきたい。
・資料提示中、一方通行にするのではなく、児童のつぶやきを教師が聞き取り、どんどん質問したり、感想を言えるような機器の利用を考えたい。

(3)教科について
<成 果>
・「山地の人々のくらし」の学習を通し、ふるさと坂内の特色や、自然や地形を活かしたくらしの工夫や先人の知恵を学ぶことができた。
・東小に伝え、質問を受けること、大垣市の様子と比べるなかで、いっそう理解が深まり、児童が自分のふるさとに誇りを持てるようになった。
<課 題>
・学習のまとめの場だけでなく、お互いの学校で、ともに何かを調べている段階でのマルチメディアを活用した交流授業を仕組み、そのあり方を研究したい。
・地域性を活かすという意味では、社会科だけにとらわれず、理科との関連を図ったり、環境問題を扱うなど、幅広い活用を試したい。

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