文部時報
岐阜県における教育情報ネットワーク
岐阜県教育委員会
1 本県の教育情報ネットワークの構築
本県においては、県図書館を中心とした教育情報ネットワーク(SMILE)を教育委員会の各課及び知事部局と連携を図り、段階的に整備拡充している。県図書館と生涯学習センター、2箇所のアクセスポイント(飛騨、東濃)を専用回線で結び、県や市町村の施設等から書誌情報、生涯学習情報をパソコン通信(画像等も転送できる通信システム)で収集できるようなシステムを構築し、平成7年7月7日にスタートした。
さらに、学校においても書誌情報等を活用できるように、県立の高等学校及び特殊教育諸学校86校にINS64と端末機1台を整備し、ネットワーク環境を構築した。また、県内の教育機関(情報処理教育センター、教育センター、スポーツプラザ、教育用ソフトウェアライブラリセンター等)を専用回線で結び、インターネットに接続し、多くの情報を収集できるようにシステムを拡充した。
平成8年度には知事部局と連携して、公立の小中学校等に、1台のパソコンとINS64を整備し、民間プロバイダに接続して、インターネットを活用できる環境を整備した。
平成9年度には、本県の学校教育を一層充実発展させるために、SMILEの一環として教育センターに情報通信ネットワークシステムを構築し、インターネットを利用して、各学校・教育機関等から教育センターの教育研究資料や教育図書情報、教育用ソフトウェア等の様々な教育情報を入手できるようにするとともに、情報交流の場を構築して教師及び児童生徒の情報活用能力を育成する情報拠点整備を進めている。
また、児童生徒がインターネットを活用する際の有害情報の阻止についても検討している。高等学校等は、インターネットの出入り口である県図書館のサーバにファイヤーウォールをかけてハード的に排除し、民間プロバイダに接続している公立の小中学校では各クライアントで、ソフト的な排除の仕方を研究している。
2 教職員研修の工夫
SMILE及び複合機能をもったソフトウエアライブラリセンター(県内3箇所)の整備にともない、教職員研修が県内各地で実施できるようになった。また、コンピュータは整備されているが、指導できる教師が不足し困っている学校に、システムエンジニア(SE)を派遣して授業補助や校内研修を充実させている。さらに、SMILEの構築に伴い、ネットワークのよさを生かしたインターネット通信講座等の教職員研修を工夫している。
(1)集中型研修
集中型研修とは、教育センター等に県内各地から教職員を集めて行う研修である。本センターでは、情報拠点整備に伴いインターネット研修ができる環境を整えている。平成9年度は、地区のリーダー的な教師を対象にインターネット特別研修講座を実施し、インターネットの指導者を育成している。また、平成10年度以降は、基礎、活用、応用、特別、校長の5つの講座を設け、約1600人の教師を対象にインターネットの研修を行い、いろいろな角度から教師の情報リテラシーの向上を図るよう計画を立てている。
(2)分散型研修
分散型研修とは、西濃・飛騨・東濃の3カ所の複合機能をもった教育用ソフトウェアライブラリセンターを利用して行う研修である。教育用ソフトウェアライブラリセンターでは、ソフトの検索・閲覧をはじめ、コンピュータ研修やインターネット研修を実施できるようにしている。ライブラリセンターに近い市町村教育委員会や学校等は、地域や学校の実態に応じて、主体的にソフトの使い方やインターネットの操作、ホームページの作成、ホームページの授業での活用についての研修を行っている。
(3)在宅自由型研修
在宅自由型研修とは、ネットワークを利用して行う研修で、自由な時間に主体的に実施できる。全学校等をインターネットに接続し、メーリングリストを構築したことにより、全学校に一斉にメールを送受信できる。この機能を生かし、インターネットの研修として「インターネット通信講座」を平成9年6月2日より、毎日実施している。県内の学校の教師をボランティアで集めて通信講座のテキストを作成し、教育センターから、各学校にメーリングリストを使って、毎朝テキストを送信している。各学校では、メール当番を決めるなどをして、毎日送付されたメールを開き、テキストをもとに工夫した研修を実施している。
3 教育情報ネットワークの活用
本県においては、SMILEの整備に伴い、平成10年2月現在、小学校16.7%、中学校20.0%、高等学校及び特殊教育諸学校100%が、ホームページを開設し、情報発信している。また、岐阜大学教育学部附属カリキュラム開発研究センターや教育センターと連携して、教育情報ネットワークの活用研究を推進している。
情報交流としての掲示板、協同学習としての遠隔共同調査、情報の共有としてのアンケート利用、通信手段の拡充としてのメーリングリストなど、インターネットの教育での活用について実践研究している。
(1)SMILE掲示板の活用
SMILE掲示板とは、インターネットを活用して、教師間の意見交流による授業の質的改善、児童生徒間の活動交流による主体的な子供の育成をめざして、構築したものである。現在開設された掲示板の部屋は、「地域素材の活用」「環境ボランティア」等であり、学校間の垣根を取り除き、情報受信から情報発信できる教師及び児童生徒の育成に努めている。
(2) 遠隔共同調査
インターネットを活用して複数の学校が共同で遠隔共同調査を行い、得られた情報を共有する学習を試みている。例えば、中学校の気象の学習では、生徒が継続して気象観測を行い、自分の住んでいる地域の天気の変化を調べる。
そこで、気象観測の実施時期等を決めて、メーリングリストで県内の中学校に気象観測を呼び掛ける。生徒が気象観測を行い、観測結果を遠隔共同調査のホームページに入力する。自動的に一覧表やグラフを作成するホームページを構築し、各学校は掲載されたデータを検索したり、ダウンロードしたりして、理科の学習等に活用する。
(3)アンケート調査の活用
インターネットでアンケートを実施し、ホームページ上で回答すれば、自動的に集計され、グラフ等が表示されるシステムを構築している。今年度は、「生活科のアンケート 冬に扱う単元」を県内の小学校で、生活科を担当している教師に対して実施した。アンケートに参加した教師は、調査結果を実践に役立てることができる。アンケートの内容は生活科で冬に扱う単元において、県内でこれまでに報告された事例をもとに作成した。メーリングリストで県内の約400校の小学校を対象にアンケートを5日間実施した。自由意志によるアンケートの回答であったが、183名の教師がアンケートに参加した。教育センターからは、アンケート結果を参考にして改善された生活科の指導計画や、アンケートについて寄せられた意見をホームページに掲載して、紹介した
(4)メーリングリストの活用
地区別の学校、校種間等のメーリングリストを作って、次のような活動や情報を提供している。
- ネットワークによる研修(インターネット通信講座)
- ボランティアによる通信講座のテキスト作成
- 教育センター等からの緊急情報提供(台風時等における受講方法について等)
- 教育委員会からの連絡
- 各学校での研究発表等の案内文
- 各教科の研究委員会からの開催通知
メーリングリストの活用で、情報伝達のスピード化、情報のデジタル化を図ることができるようになってきた。今後は、情報処理能力を高め、自分に必要な情報を収集し、活用できるようにしたい。
4 今後の課題
インターネットを活用した全学校対象の通信講座や特別講座の実施等によって、教師のインターネットに対する意識や操作能力も徐々に高まりつつある。今後は、各学校のホームページについて、どんな目的で、誰に向けての情報発信なのかを十分に考え、児童生徒がホームページに積極的に関わり、児童生徒の活動がより高まるような学校の取組を推進していきたい。
また、全学校をインターネットで結んだことにより、教育情報を充実させ、ネットワークを活用した学校間の情報交流などの活動を工夫していきたい。
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