大野郡丹生川村立丹生川小学校
雪・花・サラダの里として村作りを進める丹生川村で、本校は10年以上にわたり勤労生産活動(みどり活動)を柱とした教育を続けてきた。地域の協力も得て、児童は、自然や物、命あるものに心を寄せ、汗して働くすばらしさを感じる子に育っている。
平成11年度・12年度は教育課程の研究推進校として指定を受け、新しい教育のあり方の一つとして、勤労生産活動の中から生まれる「気付き」を発展させていく総合的な学習の時間を位置付け、「生きて働く力」を児童に身に付けさせる教育に取り組んできた。そして、その力を身に付けることによって、児童は「ふるさとを知り、ふるさとを愛する子」になると確信し、研究を進めてきた。その後、平成13年度は、総合的な学習の時間の課題設定に焦点をあてた研究、そして本年度は、教科と総合的な学習の時間との関わりに関する研究へと発展させている。
本校の総合的な学習に関する基本的な8つの考え方
1.総合的な学習で児童に身に付けさせたい力を、三つの知(自分知・内容知・方法知)としている。
自分知・・・・自分をどう生かし、どのように生きるかにつなげる価値の発見、判断、選択
内容知・・・・児童が学習活動を通し、学んだ知識や考え、新たに生まれた課題等
方法知・・・・問題解決における児童の主体的な追究方法や、自分を表す表現方法
(情報の集め方・調べ方・まとめ方・発表の仕方・討論の仕方。栽培・観察・実験・見学や調査・もの作りの仕方)
2.勤労生産活動からの気付き(課題意識)をもとに課題を見付け、追究活動を発展させている。
例@:(3年生)
丹生川村の特産品《トマト》を、地域の名人に教えてもらいながら作るうちに、トマト作りの工夫に気付き、日本一の丹生川トマトを作る人たちに負けないようなトマトを自分たちも作ろうと活動した。
例A:(5年生)
《米作り》を伝統として取り組んでいる5年生は、環境に優しいアイガモ農法に取り組んだ。環境に優しくするにはどうしたらよいかということから、まず自然と仲良くなる活動に発展させていった。その後、リサイクル活動,ゴミ拾い,生物調査などよりよい環境を作るための取り組みを行った。
3.児童のもつ課題と追究活動は、本校研究の根源にある「ふるさとを知り、ふるさとを愛する子」を育てることにつながっていることを基本としている。
本校の総合的な学習の特徴は、「福祉」「国際理解」「環境教育」etc.といったテーマがあって始まるものではなく、目指す児童の姿【ふるさとを知り、ふるさとを愛する子】を求めて行うという点である。従って年度の初めに指導計画は作成しない。
目指す姿に向かう課題設定や追究活動なら、考えられる学習内容はどんな内容でも認めていく姿勢を大切にしている。
4.本校では学習をどう構成していくかという大まかなルールを決めて各担任、各学年で取り組んでいる。
ルール
@柱となる勤労生産活動の内容を決める。
A勤労生産活動の内容、教科の学習内容、児童の実態や願い、過去の総合的な学習の時間の経験などから、どんな「自分知」を身に付けさせたいかを決める。
B児童の気付きを発展させたり、気付きを予想したりして、単元の可能性を探るウェビング表を作る。そのとき教師は身に付けさせたい自分知に関連する気付きや、発展させていけそうないくつかの単元の可能性をあらゆる方向から考えることができる。
※ウェビングとは、くもの巣のように1つの考えや事象から次々とつながりある考え方や事象をつなげていく手法のこと。
5.他の教科の学習、道徳、特活との関連を明らかにする。
平成14年度の研究では、教科での基礎的・基本的な指導内容を、発展的に展開する総合的な学習の時間とどのように関連させながら展開していけばよいかを明らかにする研究をしている。各教科で身に付けた基礎的・基本的な内容をどのように総合的な学習の時間に生かすか、また、総合的な学習の時間で身に付けた力を、他の学習でどのように発揮していくかなどの、有機的な関連を見出そうとしている。
6.児童の気付き(課題意識)をもたせること、主体的な課題の追究計画の立案に時間をかける。
児童が「自分で考え、自分で決めて、失敗を恐れず行動してみる意欲や関心」を身に付けることが「生きる力」につながると考える。そのスタートとなる気付き(課題意識)を、児童自らが強くもつことが何よりも大切である。そして、児童が主体性・創造性を発揮して、自分なりの方法で立ち向かえるように課題の追究計画を立てるとき、教師は児童と深く関わり、時間をかけて援助していく。
7.人とのふれあい(コミュニケーション能力)を身に付けることに視点を置いている。
総合的な学習の時間では、仲間、家族、地域の人や、関連ある人など、多くの人との関わりを通して学ぶ機会が増えてくる。人との関わりで大切になってくるのは、ふれあい(コミュニケーション)能力の育成であると考えた。教科の学習全般において、「話す・聞くのスキル」を意識した指導を重視したり、人とのふれあいの場面を多く設定するなどの工夫をしている。
8.学びを伝えあうための会として『やなぎっ子フェスタ』を行っている。
総合的な学習の時間「やなぎっ子タイム」(3〜6年)と生活科(1〜2年)での学びを、仲間や地域の方に伝え合う場として、『やなぎっ子フェスタ』を位置付けている。このフェスタは、一方的な発表の場ではなく、双方向の交流ができるよう、小集団や個人で発信する場と、聞く人から意見をもらったり、実際に関わり合ったりする場を設定している。
本校では、各学年が十分に勤労生産学習ができる田畑や環境があり、また児童と学校を強力に支え全面的に協力してくださる家庭や地域の人々がみえるおかげで、自主的・意欲的に勤労生産活動に取り組むことができる。その勤労生産活動をベースに、教師が「児童に身に付けさせたい自分知」を明確にし、自分の課題意識・追究活動を積極的に指導・援助してきたことによって、児童は主体的・創造的に追究する喜びを感じ、「ふるさとを知り、ふるさとを愛する子」に育ってきている。