【選択社会】

「国府」をもとにした統計・グラフ・分布図つくり

〜国府町を紹介するパンフレットを作ろう〜

吉城郡国府町立国府中学校  松村 直樹

 

 

 

 

 

1 題材観

1.題材設定の理由 

中学校学習指導要領社会科編の、教科の目標に、「広い視野に立って、社会に対する関心を高め、諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し、…。」とある。社会的な事象を、様々な面からとらえる力を身につけることで、理解を深めることができ日本をより知り同時に、基礎的教養を培うことができるというものである。

また、この部分は“社会科の特質を踏まえて学習の過程を大切にし、問題解決的な能力の育成を重視する観点から、新たに付加したものである。”と説明されている。

あふれる情報の中で、必要な情報を選択し、正確な事実をつかむことが現代社会においては不可欠であり、問題解決的な能力の育成において、情報活用能力(情報リテラシー)を高めていくことは必要不可欠である。

このことからも必修社会科において、資料活用の力をつけることに重点を置く単元は14ある理由は、容易に推測できる。(県中社研授業研究委員会「学び方の系統的な指導を考える」より)

さて、選択社会科では、一人一人の興味・関心に基づき、継続した一定期間の取り組みの中で、発展的・専門的な追究活動が可能であり、これらのよさを最大限に生かし、資料活用能力を高めていきたい。

選択社会科で培われた資料活用能力が必修社会科においても発揮され、問題解決的な能力の高まりに寄与することを期待したい。

そのために、身近な地域を素材とし、一人一人の興味・関心に基づき、必要な資料を選択・収集し、それらから的確な情報を読み取り、自分の意図することを分かりやすく伝え

 

 

る資料を作成することに、重点を置き、上記のような題材を設定し授業を構成することにした。

 

2.地域素材「国府町」について            

国府町は、岐阜県吉城郡の南端に位置し、東は大野郡丹生川村、南は高山市、西は大野郡清見村、北西は古川町、神岡町、北東は上宝村と接している。甚だしい遠隔地や地形上の複雑さはなく、まとまりはよい。

町名の由来は、斐陀(飛騨)国府の所在地から『国府』と名づけられ、国宝・国指定重要文化財・史跡等の宝庫であり、「飛騨の古都」、「飛騨歴史文化発祥の地」にふさわしく、古代と現代、そして自然と人がよく調和した町とも言える。

人口八千人あまりの国府町は、将来都市像を「活力とロマンのある“文化的な田園都市”国府」とし、町づくりを行っている。

田園都市と銘打つだけあり、かつては米づくりが盛んに行われていたが、現在は減反政策もあり、米の生産量は減少している。しかし、一単位面積あたりの収穫高は、岐阜県でトップという誇りを持っている。国府町の農業の主流は野菜づくり、花づくりになりつつある。

また、農業について、国府町は特産品として、飛騨もも、飛騨りんご、ほうれんそう、飛騨牛がある。とくに、桃、りんごについては生徒もよく知っており、小学校の社会科でも学習している。しかし、桃、りんご栽培は、近年後継者不足で伸び悩みをかかえているという実態もある。

観光面では、県立自然公園「宇津江四十八滝」を持ち、県外からも観光客が来ている。  ここ2年ほど、温泉施設や特産物店なども作られ、国府町の自然や特産物をアピールしている。

 

3.単元の構成について

国府町を取り上げることは、上記のようなことが生徒にとってなじみの深いことであり、資料が入手しやすいというところにある。

全17時間(半期)で構成しているが、前半は、おもに資料の集め方、資料(グラフ・表・図)の書き方、読み取り方を重点としている。後半は、読み取ったり作ったりした資料を使って、説明する方法(表現方法)を身につけることを重点としている。最終的には、『中学生の目から見た国府町をPRするパンフレットを作ろう』という共通テーマのもと、グラフや表・図、写真などの資料や解説文を載せたパンフレットを作って、まとめるようにする。

 

2 生徒の実態と指導観

  後期に選択社会に来ている2年生生徒は、10名は第一希望で入ってきた。残り9名については、第二・三希望である。社会科の4観点の中の「資料活用の技能・表現」で見ていくと、文章資料の読み取りは、比較的できるものの、グラフや図からの読み取り、とくに2つ以上の資料が出てくるとその関連性を読み取る力が弱い。

  関心・意欲については、作業的なことは意欲的に行うが、課題追究について思考が伴ってくると関心が薄れる傾向にある。

  そこで、後期選択社会科では、選択してきた以上、やはり一つでもできるようになったという充実感を持たせてやりたいと考える。

  したがって、資料活用・技能の力をつけることを重点とする中で、資料を探すポイント、資料を作るポイント、読むポイントなどを明確にしてやり、かつ、あまり、生徒の関心にそぐわないところでの追究活動にならないよう、できる限り簡単な取り組みになるようにしたい。そのためには、追究テーマをしっかり決めさせ、そのテーマ解決に必要な資料が手に入るのかどうかを指導者が見極める必要がある。

  本時は17時間中の8時間目であるが、生徒が追究テーマにそって調べたことをグラフや図にし、それを読み取り合うところである。ここでは読み取りポイントを示して、読み取らせるようにしたい。そして、授業の終わりで、資料の読み取り方について理解できたか、また読み取りから予想を自分なりに立てることができたかどうかを評価していく。

 

3 必修社会科との関連について

  今回の2年生選択社会科の単元構成は、1年生地理分野「身近な地域」と同様に、国府町を題材に取り上げている。

  「身近な地域」は、直接経験地域の地理的事象を学習対象として、観察や調査などの活動を通して、身近な地域に対する理解と関心を深めさせるとともに、市町村規模の地域的特色をとらえる視点や方法を身につけさせることを主なねらいとしている。

  それに対し、今回の選択社会の単元では、ある程度1年生時の必修社会科の学習で得た、国府町に関することの知識をもとに、さらに追究するという視点でスタートし、調べた結果を文章やグラフ、表などにして分かりやすく示すことを目的に、これら表現の技能を重点とし構成した。

  つまり、題材観でも記述したが、全く違うのではなく、身近な地域でも育てたいグラフや表などから読み取る技術や、調べたことを整理したり伝達するための説明やグラフ化、図化する技術を、より会得させるための、補充的・発展的な単元構成である。