はじめに
平成14年度末に全国で実施された学習状況調査の結果からは,児童は理科が好き,つまり理科離れはしていない,しかし,理科を大切だとは思っていない状況が感じられます。このような状況では,理科の学習で学んだことが,日々の生活に生かされていくことを期待することはできないのではないでしょうか。
本会が研究主題に掲げている「問題解決の過程を通し,科学的に追究する喜びをあじわう理科学習の創造」を目指し,自然の大切さ,科学的に考え自らを高めていくことのよさ,仲間と学び合うことのよさをあじわい,日々の生活に生きる理科の学習の実現を図っていく必要があります。そして,科学への,未来への,夢と希望を与え,人と人,人と自然が共生することの大切さやすばらしさを感じさせるようにしなければいけません。
学習指導要領が改訂されて3年目を迎えようとしている時に,「歯止め規定」の緩和を意図して異例の一部改訂がなされました。内容の範囲や程度等を示している事項にかかわらず指導することができるということは,安易に学習内容を追加することを意味しているのではなく,あくまで,習熟の程度に応じた指導,興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れた指導の工夫を推進し,一人一人に応じたきめ細かな指導をする場合の必要に応じて配慮することだと思われます。
こうした動向を踏まえて私どもの歩みを振り返ってみますと,昨年度にも触れましたように,本県では,多くの先輩の方々から年々受け継ぎながら,児童が自然に親しみ,観察,実験を通して,主体的に学び,問題解決の能力を育て,科学的な見方や考え方を養うための実践を積み重ねてきており,現行の学習指導要領に至る改訂の趣旨,さらに今回の部分改訂の趣旨に十分に即した実践であったと自負できるものです。
また,児童が確実に学力を身に付ける学習指導ができているのか,自然の事物・現象に触れる活動や体験が不足してはいないか,集団の中で一人一人が見方や考え方を練り合うことはおろそかにされてはいないか,また,教師の理科離れ,などの懸念については,会員のみなさんの地道な実践研究の累積によって確実な改善がなされております。
○ 本年度も,本県小学校理科教育を背負って立つ若手の先生方や現在中核となって活躍し ておられる先生方がいっしょになって充実した実践研究をされました。理科大好きスクー ルにおける実践も含まれ,いずれも,大いに参考にしていただくことができるものです。
○ 会員の一部が,実技・実習研修の資料を作成しました。小学校理科実験観察指導力向上 グループとして,県教育委員会の支援をいただきながら,理科専門ではない小学校の先生 方に,理科の楽しさに触れ,観察,実験の指導力を向上させていただくためのものです。
○ 夏季ゼミナールの在り方を改めました。今年度は,岐阜地区の代議員の先生方の総力を 結集して内容の工夫を図り,多数の,また,県内すべての地区からの参加を得て,大成功 を納めました。
○ これらの研究成果や理科教育関係の情報を,会員の方のみならず,すべての先生方にご 覧いただくことのできるようにホームページを開設しました。
来年度は,豊かな自然に囲まれた郡上市立相生小学校を会場として県大会を開催します。会場校のみなさん,郡上市,美濃地区の関係の方々が着実に歩んでいてくださいます。
小学校理科教育について学ぶ機会は充実しております。
科学の子『鉄腕アトム』が生まれて2年目,理科は好き,さらに,理科は大切だという児童を育てるべく,まず,私たちが力を付け,理科教育の充実,発展を図るよう,いっそうの努力を重ねてまいりたいと思います。
平成16年3月吉日
岐阜県小学校理科研究部会
会 長 岩 田 將 之