音楽科と環境教育
1 音楽科と環境教育のかかわり
(1)環境教育推進のための素地を形成する音楽科における情操教育
音楽科では,表現及び鑑賞の活動を通して,一人一人の豊かな情操を養うことを目指している。 豊かな情操とは,よさや美しさ優しさなどを感じ取ったり進んでそれらを求めたり表現したりする調和のとれた 人間らしい感情のことである。これは,自然の美しさや大切さを感じ求めるなど環境教育がめざす豊かな感受性や見識 をもつ人間を形成するための素地となるものである。
また,音楽は自己の思いや気持ち,感情を音や音楽を通して表出し,他の人間に伝達するという特性をもっている。 音楽科ではこのような音楽の特性を基盤に置き,自らを創造的に表現する力,美しさに感動する心,他と共感する心を培い, 豊かな感性を育てるように指導の工夫を図ることが大切になってくる。
(2)豊かな情操を養うために
@「表現」の活動を通して
音楽授業では,歌唱・器楽・創作などの多様な表現活動が行われている。歌唱では,教材曲の歌詞から情景を 思い浮かべ,強弱・増減・テンポなどを工夫して自分の思いや願いを曲にのせて表現することができる。器楽では,様々 な楽器のもつ音色に耳を傾け,楽器の特性を生かした表現を楽しむことができる。創作では,環境教育にかかわる活動 で体験した感動や,環境を守ろうとする発想を音楽を通して表現することができる。また,歌唱・器楽・創作の領域を 区別しないで一体的に表現することもできる。
歌唱共通教材の中には「うみ」「春の小川」「さくらさくら」「もみじ」「冬げしき」「おぼろ月夜」「ふるさと」「夏の思い出」 「浜辺の歌」など小・中学校にわたって日本の自然の素晴らしさを題材とした曲が多くあり,これらの情景を思い浮かべ ながら表情豊かに歌うことで豊かな情操を養うことができる。
楽器を使った表現では,音色に対する感性を育むことができる。創作では,例えば,学校の近くを流れる川は, 生活排水や工場からの排水が混入しており環境的には,あまり良い川といえないかもしれない。しかし春,川の両岸を彩 る桜並木は,実に美しく,人々を楽しませてくれることがある。このような自然の姿を詩で表し,朗読する際に,音による 表現を加えたり,詩に曲をつけて歌ったりする事により,環境に対する豊かな情操が養われる。
A「鑑賞」の活動を通して
「鑑賞」の楽しみは,音楽を聴いて心が潤う所にある。そのときの自分と同質の音楽を聴くことにより,心の安定が もたらされることは,音楽療法の説明でも明らかにされているところである。また,自然のすばらしさを音楽の様々な要 素で表現した交響詩のような音楽に聴きひたることにより,環境に対する豊かな情操が養われるものと考える。
2 音楽科における環境教育推進の視点
(1)表現及び鑑賞の活動を通して,音楽性や創造活動等の能力を伸ばす。
(2)多様な音楽の学習活動を通して,音環境に対する関心を高める。
(3)音楽の表現による自然の美しさの鑑賞を通して,自然に対する感受性や美意識を形成する。