平成13年度国際理解教育部会夏季ゼミナール  

  第4部会Tのまとめ  (司会者 阿部剛先生  助言者 川島敏美先生)

1.             御嵩町立御嵩小学校 秋山千穂先生の実践「小学校における開発教育の試み」

(1)発表の概要

@「友達ビンゴ」の実体験

  教師用(大人用)のビンゴを研究会参加者が体験した。その場にいる人同士で次々に相手をかえながら質問をしあう。質問内容は、例えば、

A.ファーストフードのハンバーガーを食べたことのある人。今までの人生で大体何個ぐらいか。

B.世界で一番多く穀類を輸入している国はどこか。

というようなものである。リラックスした気分の中で異文化体験に向かうスタートの意味で学級開き時、自己紹介に替えて行っている。子供たち用のものは簡単に答えられるものが含まれている。ただし、他の自己紹介ゲームと違うのは、そこに開発途上国に目が向けられるような質問項目が考えられていることである。具体的に言うと、Aであれば、マクドナルドのハンバーガーの牛肉のもとになる牛1頭はブラジルの草原1ヘクタール分を食べているというようにである。

A「世界の子どもたち」の実践

  「開発途上国の子どもたちの写真」から気がついたことを交流した。初めは、肌や目の色、あるいは服装という違いにばかり目がいっていた子どもたちだったが、やがて手伝いをしているところやつらそうなことも楽しそうにやっているところというように似ているところに気づくようになり、また「インドの子の服装はその国独特の服装ということで日本の着物みたいなものだ」というように文化は違っても文化をもっていることは似ていると考える子どもも出てきた。

この活動は、2学期からの総合的な学習の時間のオリエンテーションにつながるものであり、また次への意欲となるものである。

B「友達のいいところ見つけた」の実践

毎月1回友達のよさを見つける活動を行い、さらにそれを宝物としている。異文化理解に結びつくものだと考えている。

(2)質疑応答

@     友達ビンゴの中の「マクドナルドの牛」の事実の裏付けはどうなっているのか。

A・・・NGOの方から聞いた話をもとにしている。

 司会者・・・幅広いデータが得られるようにこの部会のホームページの内容を充実させていきたい。

AAの実践の写真は開発途上国に偏っている。その意図は何か。

  A・・・1つには先進国に住んでいる立場から考えることになるということ。もう1つは、どうしても私たちの生活では触れ合う機会が先進国の人に限られがちであるので、こうした機会をとらえて開発途上国の人たちとの触れ合いを考えてみた。

(3)「開発教育」とは

 異文化理解を促すために体験などを取り入れていくような教育と考える。

 この点については、川島校長先生よりのご指導のところで述べる。

2.   多治見市立陶都中学校 宮地敏彦先生の実践「生徒指導における異文化理解の試み」

 (1)発表の概要

 2年間ソロモン諸島で海外青年協力隊として働かれた経験をもとに実践されている。

@     ○×クイズ

ソロモン諸島の暮らしぶり、島民の意識、協力隊の仕事などをクイズを通して行うことによって理解を図る実践。学校としては多治見市をもっと知ろうということで研究を進めているが、この実践によって、外国が日本に何を求めているかという視点がもて、次の課題への設定ともなった。

A     ソロモン諸島の実際の写真を見て

ソロモン諸島の写真を見ながら、協力隊の具体的な活動の様子や現地の人の暮らしぶりを理解できるようにしてきた。具体的な日常生活や子供たちと同世代の若者についての話を補足することにより、より理解が図られるようにした。

B「フォトランゲージ」によるディスカッション(資料参照)

  具体的に2枚の絵で具体的な提案がなされた。

     今世界が抱えている問題(環境問題など)

     南北問題

     そこに潜む感情

など、子供たちはいろいろな視点や立場から意見を出し合った。それを交流することにより、いろいろな見方や考え方があることに気づくことができた。しかし、大事なことは、確かめるためにはこの人たちの中に入っていかないとわからないということである。外国の文化を理解しつつ、自分たちの生活をふりかえるような実践である。

 (2)質疑応答

  ここで使われた資料についても、本研究会のホームページからダウンロードできるようにしていきたい。

3.ご指導

 (3)成果

     2人とも海外での勤労を通した体験活動をもとに実践をしている。そのため、海外のその国への思い入れの強さがあり、それが指導実践にも生きている。そして、それが開発教育へとつながっている。

     具体的には、各先生次のことが成果としてあげられる。

〔秋山先生〕

     まず、学級づくりが実践への土台であるとしてとらえ、取り組まれていることがよい。

     体験ができない子供たちにとって写真の有効性があげられる。

〔宮地先生〕

     自分の体験を子供たちにどのことをどう生かそうかと考えて取り組まれている。この学習が子供たちにとって主体的かつ意欲的な取り組み、さらには将来への夢へとつながっていくと考えられる。

 ◎     メディアの利用の有効性が明らかである。総合的学習の時間がめざす子供たちにどう学び方を身につけさせていくかということであるが、そのためには教師も一緒になって取り組んでいくということである。

 (4)課題

●異文化についての理解は、単なる知識であってはいけない。体験に基づく力を求めたい。そのためには、いかに年間を見通し、点から線へとつないだ国際理解教育の実践であるかが重要である。すなわち、カリキュラムを作成したい。

●「同じ人間だ」と考えるためには直接体験が大切である。しかし、世界中の人々を招くことは不可能であり、「異文化を認め共生する力」は知識だけでなくそういう「ものの見方・考え方」を広げる学習が展開されるべきである。そのためには、どんな力を育てたいか、そのためにどんなカリキュラムを立てるか(前述)、どんな間接体験の授業を展開するかが大切である。よって、本研究部会では、違いを違いとして認め共生していける資質や能力を育成する授業実践を求め、紹介していきたい。

 (5)開発教育

@     文化・民族の違いを尊重しながら開発、南北問題を理解し、解決に向けて参加していく態度を養うもの。

A     総合学習として取り組んでいくべき。小学校低・中学年では、「文化の多様性」「世界とのつながり」を、小学校高学年から中学校では、「『貧困・開発・協力』の理解と参加」をめざしていきたい。

B     開発教育は、総合の中での問題解決学習の手法が有効である。つまり、内容としては異文化理解と共生そのものを学ばせ、そのことを通して学び方を身につけさせていきたい。

  

                       (文責  岐阜市立市橋小学校 青木由美子)