インドネシアのバテック制作工程 
その2  実践編へ 
 
 バテックの技術を習得するために、夏休みを利用してジャカルタ市内にあるバテック工場に行きました。
  バテックのレッスンといっても現地の職人の中に混じってわからないところを聞きながら、一緒に作るというもの です。いわゆる弟子入りしたような感じです。
職人の人達はほとんどが女性です。しかしチャップ職人や染めの人は男性がやっていました。
 そこでは主におみやげ用のテーブルクロスやハンカチの他、現地の学校の制服のための布を染めていました。
 右の写真はそのときの様子です。とにかく言葉も分からないので身振り手振りでの実習になりました。
チャンティンというロウ引き専用の道具でロウ引きしているところです。
 ろう引きが終わって一色めの青を染めるところ。白(ロウ引きしてあるところが白く抜ける)がはっきり出るように裏表からロウ引きがしてあります。染めには2種類の薬品を使いました。初めにソーダと現地の人がいっていた薬品に浸けました。どうも水酸化ナトリウムが入っているようです。
染色には詳しくないので分かりません。そのときの様子です。
 2つめの薬品に浸したところです。さっと化学変化がおこって青い色に染まります。昔は天然の染料を使っていたようですが、今は合成染料が多いようです。布の真ん中に丸い棒を通して重しにして両側から交互に引っ張ります。これでむらなくなく染まるわけです。
 全体が青く染まったあと、今度は黒くするところを染めます。青の上から黒を染めてしまいます。そこで青く残したいところだけロウで刷毛など使って、塗りつぶしてしまいます。写真で黒く光っているところがロウ引きしてあるところです。次に黒い染料に浸してもそこだけは染まらないわけです。
全体を黒い染料で染めます。やり方は青の染料の時と同じです。
ロウ引きしていないところはすべて黒くなります
 脱ロウの様子です。大きな釜で煮ます。熱湯で布についたロウを溶かして取ります。溶けたロウは水面に浮きます。上手く布をひきあげないと溶けて浮いたロウがまた布についてしまいます。
職人さんの手や腕は時々お湯をかぶるので全体がケロイドになっていました。
 
熱湯から引き上げたあと、引き上げるときについたロウを取るためにソーダ(とこの人は言っていた)の中で洗います。さわった感じでは水酸化ナトリウムの水溶液のようですがよく分かりませんでした。
水洗いをよくしたあと干して乾かします。はじめにロウ引きした線は白く色が抜けています。2度目にロウ引きしたところは青い染料が残っています。最後までロウ引きしていないところが黒く染まっています。 
 
 
 
最後に周囲をミシンで縫ってもらって完成です。はじめてにしては自分でも良くできたと思います。ベルディカリバテックのみなさんありがとうございました。
 さてここからが授業での実践です。
 

 

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 画用紙に鉛筆で描いた上に染めたい布をおき透けて見える下絵を鉛筆でなぞります。    
 布は綿かポリエステルが少し入った綿を使います。    
 生地によってはロウがうまく落ちなかったり、染まりにくかったりする事があります。
 チャンティンという道具を使ってロウ引きしているところです。    
 手に指の部分を切った手袋をしているのは、チャンティンにたまったロウを誤って手にかけて手をやけどしてしまったことがあったからです。とても熱いので水膨れになりました。余談ですが、こちらの人はやけどしたら練り歯磨きを塗れといいます。冷やすための工夫なんでしょうね。    
 当地では軍手を探すのも大変です。    
 チャンティンはジョグジャカルタから取り寄せました。時々おみやげやさんで売っています。
 チャンティンを傾けると中に入っているロウが先から出てきます。    
 ロウの温度によって出過ぎたり固まって出てこなかっりするので練習が必要です。    
 ロウはパラフィンではなくてみつロウのようです。
大きなところは、ふでを使って作業しました。
     
ロウを溶かすコンロは昔は炭を使っていました。現在は灯油を使ったコンロが一般的です。しかし昨年使ってみて、火力の調節が生徒には難しいのと、コンロを倒してしまったことがあったので、いまは電気コンロを使っています。電気コンロは火力の調節がスイッチ一つでできます。    
 床はロウがたれて汚れるのでベニヤ板を敷いています。    
 写真は溶けたロウをチャンティンですくっているところです。
薄い色から部分染めをします。一色目は黄色です。部分染めは染めたくないところまで薬品が広がって染まってしまうことがあるので、あとで上からそれより濃い色で染めてごまかすため薄い色から染めます。    
 黄色に残したいところだけ刷毛を使ってロウ引きしています。両面からロウ引きします。
 これは赤く部分染めをしたところをロウ引きしているところです。    
 染料は色によって値段が違います。一番高のが茶色で、1キログラムで1万円位します。JJSでは高いので使えません。    
 茶色のバテックが有名なのはソロのバティクです。ソガという天然の染料を使うそうです。    
 他の染料は数千円で買えます。
 2色目を染めたところです。赤く残っているのが一色目です。青く染まらないようにロウでひいてあるのでこのようにみえます。    
 染料の使い方は工場の人に聞いて覚えましたが、薬品の知識がないので、原料が何か分からず、ちょっと怖いかもしれない。医者用のゴム手袋をはめています。当地ではキッチン用のものがありませんでした。(日本製はあるけど高い)
 脱ロウの様子です。ドラム缶を利用しました。大きいので湯が沸くのに2時間もかかってしまう。湯はある程度多くないと溶けたろうが水面に浮くので、引き上げるときまたロウがついたりして、うまくロウがとれない。    
 熱帯の屋外でこの作業を1時間もやるとまるでサウナ状態で大変です。(危ないので生徒は高見の見物)
こっちの人がソーダと言っているどうも水酸化ナトリウムの薄い溶液で余分なロウを落としたあと水洗いしているところ。美しく染め上がった布を見て、子どもたちに歓声が。    
 うれしい一瞬です。
水洗いしたものを絞って干します。外においておくと15分ぐらいで乾いてしまう。さすがインドネシア。
 バティク学級旗の完成です。    
 これは今年の文化祭での発表の一こまです。
 
バティックを作っての感想
    
   初めてロウを使って少し怖かったけど、わくわくして楽しかったです。   
バティックづくりは日本ではできないことだからできてうれしかったです。   
チャンティンを使ってやったけれど、インドネシア人がデパートで簡単そうにやっているから簡単かな、なんて思ったけれど、いきなりたくさんロウがでてきたりし、ポトポト落ちてきたりして難しかったです。   
みんなも同じだと思うと、とても緊張して疲れてしまったけれど、がんばりました。   
とてもいい経験になりました。(1-1 山本 碧)   

 色を染めるときのやり方など、バティックに関することを知って、日本の人たちより少し得をした気分になりました。   
ロウ引きする時、やけどをした人がいると聞いて少しどきどきでしたが、やってみるとやけどのことなんか忘れてスラスラできたからよかったです。   
チャンティンは初めて使ったんだけれど、最初の方は出が悪くて嫌いと思ったんだけれど、後で出がよくなって「おおー」と思いました。 (1-1 松原)   
    

バティック旗を作って
    
 私は少ししか色を染めることができなくて少し残念だった。   
でも筆で色を染めるのは楽しかったし、違う液を塗ると色が変わるのがとてもおもしろかった。   
自分たちで旗のデザインを考え、自分たちで色を染めて、自分たちでバティックを作れたのがうれしかったし、文化祭でも自分のクラスに票を入れてくれた人がたくさんいたのでそれがとてもうれしかった。(1-2 今井)
 
 
 
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