ケニア 質素の中にも明るい人々の生活
 

 ほぼ赤道直下ではありましたが、私が3年間生活した首都ナイロビは標高が約1,700mあることもあり、大変過ごしやすい気候でした。年間を通して10〜30度ぐらいの気温で、日中でも日陰にはいると涼しく、冷暖房器具を使うことなく生活することができました。人々は大変人なつっこく、誰にでもスワヒリ語や英語で話しかけてくれます。どちらかというとのんびりした人が多いと思います。そんなケニアですが、10年ぐらい前から経済状況が悪化をたどり、失業者がどんどん増えていきました。それに伴って犯罪が増加し治安が非常に悪くなったということです。外国人はお金持ちと考えているので、居住者、旅行者に関係なく多くの被害にあっています。置き引き、略奪、強盗など警察の検挙率が著しく低いこともあり、年々凶悪化しています。そんなこともあり、繁華街はおろか近所を歩くこともほとんどありませんでした。今日を生き延びるために犯罪に手を染めるところが、やや日本とは異なっています。相続税がなく、普通に生きていれば金持ちは末代に至るまで金持ち、貧しい人はどれだけ頑張っても変わらない、そんな保守的な世界です。
 ケニアの人々はそれで暗い表情かというと日本人以上に表情豊かですし、夢も持っています。一日一日を一生懸命生きています。私たち日本人は物質的に豊かではありますが心の方はどうでしょうか。あまりにも先を見すぎたり、目標を高く設定しすぎたりして毎日の生活に不安や不平を抱いてはないでしょうか。学期末になると学校のスタッフと会食会や親睦のサッカーを定期的に行っていました。そこで必ず彼らは楽器を演奏しながら民族音楽を披露してくれます。同様に私生活で身近な人々も、会食をすると必ず歌で喜びの意を表します。彼らにとっては音楽が最高の娯楽なのです。そのなかのほんの一部ですが彼らの音楽を奏でる楽器を持ち帰ってきました。「シェケレ」、「アゴーゴー」と「カウベル」の3点です。「シェケレ」は木製の筒の外側にビーズがかぶせてあり、揺らすことで音が出ます。「アゴーゴー」は鉄製の楽器です。棒をたたくことで音色が出ます。「カウベル」は言葉の通り、牛が首に付けているベルで居場所を知らせるものですが、それを楽器としてもケニアの人々は使っています。みなさんがよく知っているマサイ族も遊牧民族ですので、この「カウベル」を使って民族音楽を表現します。生活が貧しく、医療も十分でないためなかなか長生きできないケニアの人々ですが、家族や友人と歌を歌いながら楽器を演奏する、そんなささやかな贅沢をして、毎日をたくましく生きています。このような生き方も日本人には必要ではないかと感じる今日この頃です。
    (野田 新司)

  打楽器「シェケレ」

 木筒を揺らすことで外側のビーズが揺れ、音を出します。


  打楽器「アゴーゴー」
 鉄製の打楽器。ケニアの人々は音楽が大好きです。家族や友人と民族音楽をこれらの楽器を使いながら楽しく歌います。

   打楽器「カウベル」
牛の首に付けるベルを楽器として使うこともあります。
             ケニア
   ケニアバッグ
 観光客用や上級品は、ケニアの特産品であるサイザル麻でできています。
アメリカの「ビスコ」という団体が、スラムの人々の自立を目ざして、上等な革製品をサイザルバッグに付けた事業を興し、現地の人々の経済的自立を促しました。
これは現地の人が使うもので、ビニール紐でできています。
    シマウマの椅子
 シマウマを形取った大小椅子のセットです。顔やしっぽもしっかりあります。

   キリンの椅子
 キリンを形取った大小椅子のセットです。顔やしっぽもしっかりあります。
   英語教科書
 ケニアにはそれぞれの部族語、東アフリカ公用語のスワヒリ語がありますが、政治、経済など重要な情報は英語によって伝達されます。ですから英語ができないと社会に出てから困ります。そうした背景もあり、早い時期から英語教育を受けています。ほとんどのケニア人は生活するぐらいの英語が話せます。
  バオバブの実
 「さかさまの木」と言われるバオバブの実です。振れば音がして楽器になります