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7.実施した授業の概要(9)


第4学年 社会科 安全なくらしを守る−火事からくらしを守る−

1 指導の立場
(1)単元について
 「安全なくらしを守る」では、警察や消防の仕事に目を向け、調べることを通して、地域社会の人々の健康で安全な生活を維持するために警察署や消防署をはじめとする各種機関が組織的、計画的な活動を行っていることをつかませたい。
 子どもたちは、今までに消防車や消防士の仕事について個人差はあるものの何らかの知識は持っている。しかし、多くは外見でのとらえに過ぎず、火災についても体験がないので、テレビドラマの一場面のような感覚かも知れない。そこで「火事からくらしを守る」の学習は、まず新聞記事や家族の話から、そして避難訓練の際に行う消火の実演を思い出しながら、火事のおそろしさをつかむことからはじめ、安心して生活をするために消防の仕事が必要なことをとらえさせたい。
 坂内村は人口約700人、山間部に位置し、川沿いに集落があるといった典型的な山村である。村内に消防署はなく、初期消火における消防団の活動の果たす役割は重要である。万が一、火事が起きてしまったら1分、1秒でも早く消火するためにどんな工夫がされているのか、そして隣接の町村の消防署や消防団とどんな協力体制がとられているのか、まさに自分たちの命や生活を守ることとして課題意識を持って見学させたり調べさせたりしたい。

 東小学校のある大垣市は人口約15万人、平野部に位置し、中心部は城下町の名残りをとどめ、商店やビルが立ち並び、道路も複雑に入り組んでいる。大垣消防本部は、その中心部にあり、大垣市だけでなく北は揖斐郡池田町、南は安八郡輪之内町までを管轄する。
 東小学校の子どもたちからは大きな消防署の様子や活動の様子などの情報を送ってもらい、こちらからは消防団の活動について情報を送り、交流する。「組織的な取り組みをつかむ」の課題については、同じ資料をもとに考え、理解を深める形で学習をしめくくりたいと考える。

(2)児童の実態  男子2名、女子4名、計6名と少人数であるが、見学や調べ学習に意欲をもって取り組むことができる児童が多い。
 昨年度は、「わたしたちのくらしと商店」という単元で、村内の廣瀬商店についてお店の様子を写真にとったり、お店のおじさんやおばさんの願いをインタビューして聞いたり、売られている商品の種類を調べる学習を行った。そして大規模なショッピングセンターについて調べた東小学校の仲間とマルチの授業を通して情報交流し、それぞれの地域に合った商店の工夫をつかんだ。冬には、3・4年合同で沖縄県の嘉陽小学校との交流を行い、それぞれの土地の気候をはじめとする自然やそれに合わせた建物の工夫などを、クイズを交えて学んだ。
 これらの学習活動を進める中で、情報をわかりやすく相手に伝えるためには、提示する資料を工夫して作ったり、寸劇にして表現するなどの試みを行い、次第にテレビ会議システムの利用にも慣れてきたといえる。そして何より、自分たちの学校や村のことについて今まで以上にわかり、大事にしていこうという気持ちが育ったと感じる。
 今回の学習においても、消防団の活動をくわしく調べて坂内村の「火事からくらしを守る」方法や工夫をつかみ、東小学校の仲間にわかりやすく伝えたり、村内にはない消防署(大垣)の様子や少しでも早く消火する工夫について質問したり考えを発表したりできるよう、指導・援助していきたい。

2 研究主題とのかかわり
 4年生の社会科にかかわる「研究主題でねらう具体的な児童の姿」は、次のようである。
@大勢の児童の中で自分の考えや調べたことを堂々と話し、いっしょに考えることができる。
Aお互いの地域の特色を交流、比較することを通して自分たちの地域についてよりよく理解する。
B情報交換に適切な資料を作成し、マルチメディア機器を用いて交換できる。

 「火事からくらしを守る」の学習を、テレビ会議システムを利用して東小学校とすることは、これらのねらいにそうことであり、大変有効であると考える。
<@について>
 常時、同一の少人数集団で生活や学習を進めていると、ものの見方や考え方の深まりや広がりが乏しくなりがちである。社会科の学習においては特に、資料をもとに考える場や調べたことのまとめや発表を行う場で、その傾向を感じる。子どもたちは「自分や相手が知らないことについて調べてみたい。」と思い、「調べたことは誰かに伝えたい。」という願いを持っている。そして「知らない人にわかるように伝えること」ができたとき、それは大きな喜びになる。このことは、児童の学習意欲の向上につながり、この願う姿を達成する土台となると考える。そこで、今回は消防署(大垣)、消防団(坂内)についての情報交流の活動を位置づけたい。また、これまでの研究の反省に立ち、情報の交流だけに終わることなく、得られた情報をもとに、授業の中で一緒に考えを深める所まで、目指したい。
<Aについて>
 「1分、1秒でも早く消火しよう」という同じ消防活動でも、地域に合わせて組織が違い、それぞれの条件の中で工夫されていることを、マルチメディア機器を通して同じ学年の仲間と学び合う。ふだんは何気なく思い込んで当たり前に感じていること、たとえば「大垣は人口の多い市だから消防署があるが、坂内は人口が少ないから消防署がないのだろう。」を、この学習活動で別な視点からとらえ、「それもあるだろうが、それだけではない。その分こんな工夫もされている。」といったように、自分たちの生活をより深く理解できるよう指導したい。
<Bについて>
 社会科の特性、情報交換といった活動を考えると、資料の作成方法、提示の仕方についても研究すべき課題がうかんでくる。昨年までの反省から、資料は精選してお互いに考えを深め合えるものを用いること、映像のように提示された後に消えてしまうものは事前に相手校に写真などの資料として送っておくことなどを基本に仕組むこととした。さらに、書画カメラ、デジタルカメラなど比較的操作の簡単な機器については、中学年でも積極的に自分たちで活用できるように指導している。

3 指導計画(全9時間)
時間学習内容・活動資料など
・火事のおそろしさをつかむ
・消防について学習する計画を立てる
・避難訓練をしたときのこと
・自分の家族の話
23 ・消防署の様子や消防自動車についてつかむ
・消防庫の見学
・学研「小学4年の社会」
・坂本地区消防庫の見学
45 ・坂内村の消防の組織(消防団)を知る ・調べ学習で見つけたこと
・消防団長さんの話
・火事が起きてから消火までの活動の流れを知る ・教科書さし絵
・揖斐郡消防組合「消防年報」
・1分、1秒でも早く消火するための、機械や道具にかかわる工夫をつかむ ・写真など
・インタビューメモなど
8本時 ・1分、1秒でも早く消火するための、消防署の人たちの工夫や努力をつかむ ・大垣消防署の資料
・揖斐郡消防組合の資料
・学習のまとめをする ・自作資料
・前時の学習メモ

4 本時の目標
 1分、1秒でも早く消火するために消防署や消防団の人たちが、関係機関と協力し、組織的に消火活動に取り組んでいること、地域に合わせた工夫や活動を行っていることをつかむことができる。

5 本時の展開(8/9)
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6 考察
(1)児童の姿について
@大勢の児童の中で自分の考えや調べたことを堂々と話し、いっしょに考えることができる。
・機器を通して話すことに対する抵抗はなくなり、スクリーンに映る大勢の児童に、ごく普通に話しかけるように発表できた。話し方も、ゆっくりはっきりを心がけ、相手にわかりやすく話そうとしている姿が見られた。
・「いっしょに考える」という点では、相手の発表内容に対して聞き返したり、もう一歩つっこんで尋ねるようなやりとりがほしい。そのためには、もっと授業や直接の交流の場を設けて、気がねなく話すことができるひとつの学級のような雰囲気が必要と思われる。
Aお互いの地域の特色を交流、比較することを通して自分たちの地域についてよりよく理解する。
・少しでも早く消火するための消防署の人たちの工夫について、東小学校の発表内容と自分たちの調べた消防団のことを比べ、似ている点、ちがっている点を見つけながら学ぶことができた。坂内村では、団員だけでなく、村中の人が万一のときに備えていることを実感できた。
・今回の学習内容は、お互いに自分が直接活動したり、経験したものではなかったので、見学したり、インタビューしたことが土台であった。こういった場合、授業前にどれだけ自分たちの調べた内容を自分のものにしておくかが重要である。
B情報交換に適切な資料を作成し、マルチメディア機器を用いて交換できる。
・今回は、共通の課題について考え合うことを一番のねらいとし、そのために取り扱う資料を2種類にしぼった。大垣の消防署の資料をメインとし、共通点や相違点を示すために坂内の消防団の資料を補助的に扱ったことも話し合いに効果的であった。どこでどの資料を使って相手に話したらよいのかも児童で考えることができた。
・書画カメラ、パソコンなど、今回は児童がほとんど操作して学習を進めることができた。東小学校から送られたVTRの資料は動きがあり、わかりやすかった。
・寸劇形式で緊急通報の流れを発表する試みができた。
・マルチメディア機器のメリットを最大限に生かす資料は何かをさらに研究し、作成したり、今回の寸劇のような動きのある情報を送り合えるようにしていきたい。

(2)教師側の事前準備や取り組みについて
・お互いの学校で相手に示す資料については授業前に送っておき、必要に応じて児童に示した。これにより、映像情報の欠点(あとまで残すことができない)を補うことができた。
・児童が書画カメラ、デジタルカメラ、パソコンなど、資料に合わせて効果的に利用できるよう指導した。パソコンの操作はまだ特定の児童に限られるが、書画カメラの操作は全員がいつでも自分の示したい部分を画面に提示できるまでになった。
・とにかく事前にお互いの学習内容をよくつかみ、交流することでより学習効果が上がる部分はどこなのかをじっくり検討して授業に臨むことが大切である。
・ティームティーチング形式であっても、教師が相手側の児童の実態をできるだけつかみ、画面を通した表情などから読み取って声をかけるような指導ができるとよい。

7 成果と課題
<成果>
・機器を通して話すことに抵抗はなくなり、ゆっくりはっきりを心がけ、相手にわかりやすく話そうとしている姿が見られた。
・資料を焦点化するように指導したことによって、どこでどの資料を使って説明したらよいかを児童が考えることができた。また、東小学校の発表内容と自分たちの調べたことを比べ、共通点、相違点を見つけながら学ぶことができた。
・書画カメラ、デジタルカメラ、パソコンなどの操作を事前に指導したので、資料に合わせて効果的に利用できるようになった。
・資料を授業前に送っておくことによって、あとまで残すことができないという映像資料の欠点を補うことができた。
<課題>
・授業や直接の交流の場を多く設けて、気がねなく話すことができるひとつの学級のような雰囲気づくりが必要である。
・発表するためには、調べたことをどれだけ自分のものにしておくかが重要である。
・マルチメディア機器のメリットを最大限に生かす資料は何かをさらに追究していく必要がある。また、今回の寸劇のような動きのある情報を送り合えるようにしていきたい。
・とにかく事前にお互いの学習内容をよくつかみ、交流することでより学習効果が上がる部分はどこなのかをじっくり検討して授業に臨むことが大切である。
・教師が相手側の児童の実態をできるだけつかみ、画面を通した表情などから読み取って声をかけるような指導ができるとよい。

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