「次世代ITを活用した未来型教育研究開発事業(衛星通信利用)」


岐阜県教育委員会研修管理課
指導主事 田中正己 

1 はじめに
 近年の高度情報通信ネットワーク技術の急速な進展に伴って、学校教育においてもコンピュータやインターネットを活用した新たな教育活動の展開が求められている。これに対応するため、ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」には、「校内LAN整備」や「教育用コンピュータ整備」など、様々な情報施策が進められている。その一つに、「平成13年度末までに、すべての学校がインターネット接続する」ことと記されている。これは、へき地離島などの学校にもインターネット接続することを意味している。
 また、最近ではFTTHやADSLなどの高速通信回線の技術開発によりブロードバンド化が急速に進んでいる反面、都市部とへき地との地域間格差が益々拡大される傾向にある。
 一方、広域性・同報性等を有する衛星通信ネットワークは、へき地などの情報格差(デジタル・デバイド)を克服する通信手段として効果的である。

2 へき地学校の情報化の意義
 現在実施されている「へき地学校高度情報通信設備(マルチメディア)活用方法研究開発事業」では、ISDN回線等によりへき地等の学校と都市部の学校等を結び、大画面テレビ等を用いて、双方の児童生徒、教師が一体となって授業等を行うために必要な設備の在り方、システム運用の在り方、これに関連した授業の在り方等について研究を行うものであった。しかし、INS回線では十分な回線速度を得ることができず、相手校の画像を鮮明に表示することやスムーズなインターネットアクセスができない状況であった。
一般的に、へき地学校では「地理的悪条件」「複式授業」「固定化しがちな人間関係」などの問題がある。「教育の平等化」や「教育の機会均等」を実現するためにも高速な回線を確保し、都市部の児童生徒と同じような条件で学習できる環境整備が必要である。

3 既存のエル・ネットの活用
 今年度の「次世代ITを活用した未来型教育研究開発事業(衛星通信利用)」では、平成10年度補正で岐阜県総合教育センターに整備した「エル・ネット(映像送受信)」に、新たに「インターネット(データ通信)機能」を追加整備する。これによって、へき地学校を対象とした「安心・快適・高速」な学校間ネットワークを構築するとともに、へき地における情報格差を是正することが可能となる。
これにより、今回整備されるへき地学校約50校においては、「エル・ネットの番組配信」に加え、衛星通信を活用した「インターネット利用」「TV会議」が可能となる。

4 本事業で実施すること
(1)インターネットの活用
 今の社会において、インターネットは欠くことのできない通信手段となっている。必要な情報をインターネットで収集して自らの課題解決のツールとしたり、インターネットモラルを習得したり、また膨大な情報の中から真に必要な情報を見極める力の育成等が可能となる。
 特に、へき地学校においては、学校内にある情報量も限られている。このような中、インターネットを用いた調べ学習などに非常に効果がある。
(2)TV会議の実施
 へき地学校においては、入学してから卒業するまで同じ仲間と生活することが多い。どうしても人間関係が固定化し、仲間同士で鍛え合うということができにくい状況にある。これを克服するのが、TV会議システムを活用した他校との交流である。今回のへき地校約50校はもちろん、その他の都市部等の学校とも交流が可能なように「多地点TV会議システム(MCU)」を導入し、様々な地域の仲間との交流を実現する。
(3)教育情報データベースの活用
 複式学級では、一人の教師が2学年の児童を指導するため、「自学自習」する時間が多くなる。ドリル学習や調べ学習など、教師の指示によって「一人学び」を行うことになる。このようなへき地学校では、教師の努力によってかなりの量の学習プリントが作成されている。これらの学習プリントは、その学校・その先生だけの使用で終わるのではなく、共有化することによって参加学校の児童生徒にメリットが生まれるものと考えられる。
 したがって、学習プリントに代表される教育用コンテンツを収集・整理・提供できるデータベースを構築して教育効果を上げるとともに、「分かる授業」を実現したい。


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