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小学校社会科

 平成14年度から実施されている新学習指導要領について、Q and A方式で解説します。
<目次> T 学習指導要領改善の基本方針
U 小学校社会科改善の具体的事項
V 目標の改善
W 内容の改善
T 学習指導要領改善の基本方針                   ↑このページの先頭へ
 小学校社会科の改善の基本方針はどのように示されていますか。 
 小学校、中学校及び高等学校を通じて、日本や世界の諸事象に関心を持って多面的に考察し、公正に判断する能力や態度、わが国の国土や歴史に対する理解と愛情、国際協力・国際協調の精神など、日本人としての自覚をもち、国際社会の中で主体的に生きる資質や能力を育成することを重視して内容の改善を図る。
 児童生徒の発達段階を踏まえ、各学校段階の特色を一層明確にして内容の重点化を図る。また、網羅的で知識偏重の学習にならないようにするとともに、社会の変化に自ら対応する能力や態度を育成する観点から、基礎的・基本的な内容に厳選し、学び方や調べ方の学習、作業的、体験的な学習や問題解決的な学習など児童生徒の主体的な学習を一層重視する。
 
  • 児童が社会的事象に関心をもって進んでかかわり、それらの意味や働きを多面的に考えること。
  • 児童の発達段階を考慮して社会的事象を公正に考えたり判断したりできるようにすること。
  • 地域社会や我が国の産業、国土、歴史などに対する理解を深め愛情を育てるようにすること。
  • 日本人としての自覚をもち国際理解を深めることや、我が国が国際社会で果たしている役割について理解できるようにすること。
  • 網羅的で知識偏重の学習でなく、学び方や調べ方を身につける学習や体験的な学習、問題解決的な学習を一層重視すること。
  • 社会の出来事や事柄、地名や年号などの細かな知識を覚える授業から、児童一人一人が観察・調査、体験、表現など具体的な活動を通して、社会的事象の意味や働きなどを考えたり自分の意見を述べたりする授業への改善を図ること。
U 小学校社会科改善の具体的事項                 ↑このページの先頭へ
 小学校社会科における改善の具体的事項はどのように定められていますか。 
 各学校が地域の実態を生かすとともに、児童が地域社会や我が国の産業、国土、歴史などに対する理解と愛情を一層深め、興味・関心をもって楽しく学習に取り組めるようにすることを重視して、次のような改善を具体的に示しています。

(ア)  第3学年及び第4学年においては、旧指導要領では、地域に関する内容の学習を行い、第3学年では市町村、第4学年では都道府県までを中心に扱っているが、これについて、次のような改善を図り、各学校で地域に密着した学習が一層弾力的に展開できるようにし、児童が地域社会への理解を一層深めるようにする。
  1. 目標及び内容を2学年まとめて示し、地域に関する学習が一層弾力的に行えるようにする。
  2. 地域の公共施設の利用や人々の諸活動に関する内容と市町村の様子に関する内容、地域の生産活動と消費生活に関する内容、第3学年の地域の移り変わりと第4学年の地域の先人の開発などの努力に関する内容を、それぞれ集約、統合する。
  3. 旧指導要領の第4学年の地域における現在の開発に関する内容は、政治の働きとかかわりが深いことから、第6学年に移行し、国民の日常生活にみられる政治の働きに関する内容に含めて取り扱うようにする。また、旧指導要領の第4学年の我が国の国土の様子に関する内容は第5学年に移行する。
(イ) 第5学年においては、我が国の産業や国土に関する内容の学習を行っているが、学習が各種の資料や調査を通して一層具体的に展開できるよう、次のような改善を図る。
  1. 我が国の農業や水産業についての学習で取り上げる具体的な事例を一層選択できるようにするとともに、貿易の特色や運輸の働きについての内容は、農業や工業に関する学習の中で関連付けて扱うようにする。
  2. 国土の様子に関する内容において、児童にとって抽象的な学習になりがちな人口や資源の分布などに関する事項は、中学校へ移行統合する。
  3. 旧指導要領の第5学年の伝統的な技術を生かした工業に関する内容は、自分たちの住んでいる都道府県についての理解を一層深めるようにする観点から、第4学年に移行し、都道府県の産業に関する学習の中で扱うようにする。
(ウ)  第6学年の歴史学習については、我が国の今日までの歴史に対する興味・関心と愛情を深めるようにするため、人物の働きや代表的な文化遺産を中心にした歴史学習を一層徹底する。また、取り上げる歴史的事象を一層精選して扱えるようにし、いわゆる通史にならないようにする。
(エ)  第6学年の我が国の政治の働きや国際理解に関する内容については、学習が具体的な事例をもとに行われるよう、取り扱う範囲を明確にし、学習内容を一層精選する。
V 目標の改善                  ↑このページの先頭へ
 小学校社会科の目標はどのように改善されていますか。

 小学校社会科においては、教育課程審議会の答申を踏まえて、次の視点を重視して、各学年の目標の改善を図っています。

 児童が地域社会や我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を一層深めるとともに、世界の人々と共に生きていくことが大切であることを自覚できるようにすること。
 社会的事象に関心をもち、公正に判断できるように、各学年の発達段階に応じて、観察、調査したり、各種の資料を活用したり、調べたことを表現したりするとともに、社会的事象の意味や働きなどを考える力を育てること。

 これらを受けて、各学年においては、従来通り理解・態度・能力を統一的に育成することを目指して、各学年の目標をこれまでのように三つの側面から構成している。 

<参照>各学年の目標分析
各学年の目標は、
 理解に関する目標 各学年の目標(1)(2)の前段    以下の記述の赤字 
 態度に関する目標 各学年の目標(1)(2)の後段     以下の記述の青字
 能力に関する目標 各学年の目標(3)             以下の記述の緑字
で構成されている。

 各学年の目標を、理解に関する目標、態度に関する目標、能力に関する目標に分けて、分析的に読んでみましょう。
3・4学年の目標 
(1)  地域の産業や消費生活の様子、人々の健康な生活を守るための諸活動について理解できるようにし、地域社会の一員としての自覚をもつようにする。
(2)  地域の地理的環境、人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解できるようにし、地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。
(3)  地域における社会的事象を観察、調査し、地図や各種の具体的資料を効果的に活用し、調べたことを表現するとともに、地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力を育てるようにする。
5学年の目標
(1)  我が国の産業の様子、産業と国民生活との関連について理解できるようにし、我が国の産業の発展に関心を持つようにする
(2)  我が国の国土の様子について理解できるようにし、環境の保全の重要性について関心を深めるようにするとともに、国土に対する愛情を育てるようにする。
(3)  社会的事象を具体的に調査し、地図、統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用し、調べたことを表現するとともに、社会的事象の意味について考える力を育てるようにする。
6学年の目標
(1)  国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について興味・関心と理解を深めるようにするとともに、我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てるようにする。
(2)  日常生活における政治の働きと我が国の政治の考え方及び我が国と関係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割を理解できるようにし、平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であることを自覚できるようにする
(3)  社会的事象を具体的に調査し、地図や年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用し、調べたことを表現するとともに、社会的事象の意味をより広い視野から考える力を育てるようにする。
   
W 内容の改善                  ↑このページの先頭へ
 小学校社会科の内容の改善はどのようになっていますか。

 内容の改善に当たっては、網羅的で知識偏重の学習にならないよう、基礎的・基本的内容に厳選して重点化を図るとともに、高度になりがちな内容を上の学年や中学校に移行統合した。また、各学校において、地域の実態や児童の興味・関心等に応じた指導が一層充実するよう、学習の対象や事例を選択して扱えるようにした。

@ 地域学習の改善

  • 地域の人々の公共施設の利用の内容を市(区、町、村)の様子に関する内容に統合し、人々の諸活動の様子の内容を削除した。
  • 地域の人々の生産活動に関する内容と消費生活に関する内容を集約統合し、調べる対象を農家、工場、商店などの中から選択できるようにした。
  • 地域の移り変わりに関する内容と地域の発展に尽くした先人の働きに関する内容を集約統合した。
  • 従来第4学年の地域における現在の開発に関する内容は、政治の働きとかかわりが深いことから、第6学年の政治の働きに関する内容に移行した。また、従来第4学年の我が国の国土の様子に関する内容は、第5学年に移行統合した。

A 産業と国土の学習の改善

  • 我が国の農業や水産業、工業の盛んな地域の具体的事例については、取り上げる具体的な事例を一層選択できるようにした。
  • 貿易の特色や運輸の働きについては、農業や水産業、工業に関する内容と関連付けて扱うようにした。
  • 伝統的な技術を生かした工業に関する内容は、自分たちの住んでいる県(都、道、府)についての理解を一層深めるようにする観点から、中学年の県(都、道、府)の産業に関する内容に移行した。

B 歴史学習の改善

  1. 指導内容の厳選を図る観点から、歴史上の代表的な事象にとどめて学習するようにし、網羅的な学習にならないようにした。また、室町時代や江戸時代の文化に関する事象を選択して学習できるようにした。なお、例示した人物については、小学校の歴史学習の趣旨を一層充実させるために、また取り上げる歴史的事象とのかかわりから、従来通りとした。
  2. 我が国の戦後の歴史に関する内容については、オリンピックの開催などを取り上げ、国民生活が向上し国際社会の中で重要な役割を果たしてきたことについて学習するようにした。

C 政治に関する学習の改善

  1. 政治の働きに関する学習においては、抽象的な学習にならないよう、身近な公共施設の建設、地域の開発、災害復旧の取組などの具体的な事例を通して学習するようにし、政治の働きと我が国の政治の考え方について一層具体的に理解できるようにした。

D 国際理解に関する学習の改善

  1. 国際理解に関する学習において、具体的な事例を通して学習するようにし、外国の人々と共に生きていくためには異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることや、平和の大切さと我が国が世界において重要な役割を果たしていることを考えることができるようにした。
  2. 従来の第4学年及び第6学年に加えて、第5学年においても我が国や諸外国の国旗について扱うようにした。 
 
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