平成13年度 岐阜県高等学校教育課程研究集会(数学部会)発表要綱
数学U 校内LANを活かした授業について
岐阜県立岐阜農林高等学校
1.本校の概要
本校は1900年に開校し、昨年度創立100周年記念式典を終えた伝統校である。校名に”岐阜”とあるが、所在地は本巣郡北方町で、岐阜市との境界線に隣接している。校内では8学科(流通科学,園芸科学,動物科学,森林科学,環境科学,食品科学,生活,生物工学)の生徒達が、広大な敷地(4万坪弱)の中で座学はもちろん実習や部活動に日々励み、それぞれの方面ですばらしい実績を残している。名実共に県内はもちろん日本の農業教育をリードする中心校である。
(1)数学の教育課程 (平成13年度入学生)
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生物工学科 |
生物工学科以外 |
1年 |
2年 |
3年 |
1年 |
2年 |
3年 |
数学T |
4 |
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4 |
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数学U |
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4 |
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3 |
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数学A(いずれも選択) |
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3 |
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3 |
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(2)進路状況 (平成12年度卒業生293名)
・進学 ・就職
国公立大学… 9名 公務・公団… 8名
私立大学… 42名 民間企業…147名
短期大学… 14名 計 …155名
そ の 他… 73名
計 …138名
2.生徒の実態
人柄は全体的に温厚でおとなしく、優しい生徒が多い。
学力は8学科様々で均一ではない。授業への取り組み姿勢は年々良くなっている。数学における自発的な家庭学習はあまり見られないようだが、進学者が年々増加している事、学校全体で力を入れている資格取得等により何らかの学習をする生徒は増加しているように思われる。
授業における興味・関心はあり、教材の精選により一段と理解力を増すものと思われる。
3.テーマの設定理由
1450年頃グーテンベルクが活版印刷技術を発明してから50年間で、それ以前の1000年間に印刷された書物の量を超えたといわれている。この技術は、規格化されたものを大量に生産できる技術に応用されるなど産業革命を導き社会を大きく変える原点となった。この変化のなかのひとつの現象として「知識の共有」がある。これは、社会の平等化に大きく貢献し、現在までに至っている。
今、「情報革命」という大きな社会の変革期であると言われている。これにより情報がデジタル化され世界規模のネットワークが構築されることで「時間」や「空間(距離)」を考えることなく、世界中の何処にいてもあらゆる場所から情報を得ることができるようになりつつある。そして、現在のシステムである大量のエネルギーを使い、大量生産、大量消費、大量廃棄とい
った構造を変化させる原動力になるのではと期待されている。そのような流れの中、本校は岐阜県教育委員会から校内LAN整備パイロット校に選ばれ、ことし5月下旬に工事が完了し、使用可能となった。これにより、各教室に設置された情報コンセント(LANケーブル接続端子)を通じ、各教室に割り当てられたノートパソコンによってインターネットをはじめとする校内外の情報を簡単に入手し、活用する事ができるようになり、デモを見せる程度ならばいちいちコンピューター室を予約して授業を行う必要がなくなった。今後、教科「情報」は勿論、これを有効に活かした授業は他教科においても要求されると思われるので、早速行ってみた。
4.研究のねらい
教室にいながら、校内は勿論世界中からあらゆる情報をリアルタイムで入手し、数学の学習に利用できる。そこで、世界中のホームページから授業に生かせるものを利用することにした。ただし、次の2点に注意した。
・インパクトを強めるため、海外のホームページを最低1つは使用する。
・飽きさせないために、ゲーム形式のものを含ませる。
これらに注意し、楽しみながら三角関数のグラフを自由自在に扱えることを目指した。
校内LANを利用する為に配備されたノートパソコンにはいくつかの制約がある。その1つに、「ソフトのインストール不可」がある。web上にはFunction
View,GRAPES等良質なフリーソフトが数多くありグラフ表示には重宝するので残念だが、それが今回のねらいにはうまく当てはまった。
5.指導計画作成
6.指導展開
このような指導案に従って授業を行った。
学 習 指 導 案
教科・科目 |
数学・数学U(選択) |
指導者 |
太和田 朋広 |
指導学級 |
3HN |
授業日時 |
平成13年6月18日 (月曜日) 第4限 |
授業場所 |
3N教室 |
使用教科書 |
東京書籍 新編 数学U |
指導単元 |
2章 三角関数 1節 三角関数 |
指導単元目標
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sin,cos,tanの定義を理解し、それぞれのグラフを利用して不等式が解けるようにする。 |
本時の位置 |
C三角関数のグラフ(5時間)の第5時間目 |
本時の目標
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グラフの拡大・縮小,平行移動の基本を確認し、自由に扱うことができるようにする。 |
段階 |
時間 |
指導内容 |
生徒の学習活動 |
指導上の留意点 |
評価観点 |
導 入 |
10
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y=sinθ,y=cosθ,
y=tanθのグラフをスクリーンに映して確認させる。 注1 |
スクリーンに注目し、それぞれのグラフを確認する。
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全員の視界に入っていることを確認する。 |
ABD
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展 開
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30
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拡大・縮小,平行移動の基本を板書し、確認させる。 |
黒板に注目し、確認する。
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横方向の拡大・縮小に注意を促す。 |
ABD |
スクリーンに映した問題(拡大・縮小,平行移動)を考えさせ、指名した生徒に答えさせる。
注2 |
指名された生徒はスクリーン上の該当部分を指す。その他の生徒は各自で考える。
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ノートパソコンの操作は教師が行う。
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ABCD
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y=sin2(θ−90°)のグラフがどうなるか考えさせ、ノートに書かせる。
解答をスクリーンに映し出す。 注1 |
ノートにグラフを書く
縮小したものを平行移動していることを確認する。 |
解答状況によっては二者択一(縮小→平行移動,平行移動→縮小)で考えさせる。
弧度法の確認(指導済)。 |
ABCD
ABD |
まとめ
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10
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拡大・縮小,平行移動の混合問題についてのまとめを板書し、確認させる。
アンケートの配付・回収をする。 |
黒板に注目し、確認する。
アンケートに答える。
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拡大・縮小→平行移動を強調する。
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ABD
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観点別評価(A:関心・意欲・態度 B:思考・判断 C:技能・表現 D:知識・理解) |
注1:ホームページ「Functions 2」(http://www.univie.ac.at/future.media/moe/galerie/fun2/fun2.html)使用
注2:ホームページ「受験の鉄人」(http://www.ae.wakwak.com/~tntweb/juken/)使用
7.反省・今後の課題
アンケートの集計結果は次の通りである。(回答者23名)
(1)家庭でインターネットにアクセスすることが可能ですか?
はい…16名(約70%) いいえ…7名(約30%)
(2)本時にアクセスしたようなホームページに家庭でもアクセスして学習したいと思いま
すか? ((1)で”いいえ”と答えた人は家庭でアクセス可能と仮定した上で)
はい…12名(約52%) いいえ…11名(約48%)
(3)校内LANを使った今回の授業における長所・短所をそれぞれあげてください。
(複数回答)
長所
グラフ変化が分かり易い。(12名) 終わるのが早く感じた。(1名)
ゲーム感覚で楽しめた。(4名) テスト勉強に役立つ。(1名)
直ぐに答が出て便利。(2名) 何時間やっても飽きない。(1名)
絵がかわいくて面白い。(2名) 正確な図がよい。(1名)
印象に残る。(1名) 書く手間が省けた。(1名)
自分が分からなかったことが出てきて復習できた。(1名)
短所
スクリーンが見辛い。(15名) 操作が少々大変だ。(1名)
準備・形付けに時間がかかる。(7名) 授業が余り進まない。(1名)
スペースを取る。(2名) できることが限られる。(1名)
答に至る過程を知りたかった。(2名) ノートまとめがし辛い。(1名)
金がかかる。(1名)
(4)校内LANを活かした授業について何か提案があれば書いてください。
今回のように通常の授業で基礎・基本を学んだ上で問題を解きたい。(3名)
コンピュータ室で(1人1台の環境で)、マイペースに行いたい。(2名)
解説付きのHPを見たい。(1名)
(カーテンの遮光具合から)明るくて見辛い。暗幕を設置してほしい。そして、(そ
れを使うと)暑くなるからクーラーもつけてほしい。(1名) |
スクリーンが見辛い等の環境整備を含めたハード面を除けば授業に対する評価は概ね好評だったようだ。従って、頻度を考慮して使用すれば授業にメリハリがついて良い(興味・関心・意欲の向上につながる)のではないだろうか。
また、見学していただいた先生から次のような御高評を頂いた。
「HP上で動くソフトがあり、その利用というのは素晴らしい。結構見えていたし(明るい教室にスクリーン)、内容も分かりやすかった。」
(青木咲子先生:国語科)
以上より、”4.研究のねらい”であげた目的と注意2点は概ね達成できたと思われる。