〔岐阜県教育センター研究紀要(国語科)〕
                                [更新日:2000/3/3]

<研究の概要>
1 研究主題設定の理由
2 研究仮説
3 研究の内容と方法
4 研究の実践
5 研究のまとめ

教科教育研究 「社会の変化に対応できる資質や能力を育てる
                    教科指導に関する研究」


研究主題

〔国語科/自らの思いや考えを豊かに表現できるようにするための情報活用能力を育てる指導〕

                                   (小学校・中学校)3年計画 完結年次

研究の概要

本研究は,児童生徒一人一人が自分の思いや考えを豊かに表現できる授業の創造を目指し,発達段階に応じた情報活用能力の指導内容を明らかにするとともに,情報活用能力を育てる指導法を究明しようとするものである。まず,情報活用能力にかかわる学習や指導について調査を実施し,授業実践をもとにして,国語科における情報活用能力の指導内容を導き出した。また,新学習指導要領改訂の趣旨に沿って指導内容を再考し,情報活用能力を育成する単元の開発,評価の在り方を探った。 



キーワード     国語 情報活用能力 単元構成 表現活動 学習評価



                            <このページのTOPへ>
1 研究主題設定の理由


 情報伝達手段が多様化し,多量な情報が氾濫する現代社会の中で,児童生徒一人一人に求められるのは,情報のよき送り手,受け手としての能力や態度の育成である。それは,あふれる情報の中から自分に必要な情報を主体的に収集,選択,活用,創造していく能力や態度を身に付けていくことである。

平成10年12月に告示された新学習指導要領においても,小中学校を通じて,「互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力の育成」に重点がおかれた。中学校においては「読むこと」の領域で情報を収集するための読み方が指導事項で強調されるなど,情報のよき送り手,受け手としての能力や態度の育成が求められている。

このことから,今日の高度情報化社会において「適切に表現する能力の育成」のためには,自分の思いや考えを築き上げていくために必要な情報を収集,選択,活用,創造していく能力や態度,情報のよき送り手,受け手としての情報活用能力が不可欠である考えられる。

そこで,児童生徒一人一人が普段の生活の中でも主体的に自分の思いや考えを豊かに表現できるようになることを目指し,表現意欲や追究意欲を高める題材開発や,教材(作品)の理解の指導と音声・文字表現の指導を関連的に取り扱うことによって,国語科における情報活用能力を育てる指導法を究明していこうとした。



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2 研究仮説

 学習指導要領の指導内容とのかかわりを踏まえて発達段階に応じた情報活用能力の指導内容を明確にする。そのうえで,表現意欲や追究意欲を高め情報活用能力を育てる単元指導計画を工夫し,情報活用能力を育てる学習活動と一人一人のよさが生きる指導・援助を工夫すれば,児童生徒は自らの思いや考えを豊かに表現することができるようになる。

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3 研究の内容と方法


(1)情報活用能力の明確化と指導内容の系統化〈研究内容1〉

・文献研究・調査をして,系統表を作成する。

(2) 情報活用能力を育てる単元の開発と単元構想の具体化〈研究内容2〉

(3) 情報活用能力を育成する多様な学習活動の工夫〈研究内容3〉

(4) 情報活用能力を育成する評価の工夫〈研究内容4〉

    (2)〜(3)は,小学校1名,中学校2名の研究員による系統表をもとにした実践授業の分析を行う。

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4 研究の実践


  国語科における情報活用能力を「身近な情報の中から,自分に必要な価値ある情報を選択し,主体的に自らの思いや考えを創り上げ,適切に伝えるとともに,その結果について振り返る力」ととらえ,以下のように研究を進めた。

 

(1) 情報活用能力の明確化と指導内容の系統化

情報を活用する過程に働く能力として,情報活用能力を「情報を収集する能力」「情報を分類・整理する能力」「情報を創る能力」「情報を伝える能力」の4つに分類し,情報活用能力を育成する段階表を作成した。さらに,新学習指導要領の指導内容を踏まえ,5つの言語意識「相手意識,目的意識,場面・状況意識,方法意識,評価意識」と主な活動の観点を位置付け,それらの意識を大切にし,活動の観点からの指導を継続させていくことにより,実践的な指導になるようにした。(図表1 情報活用能力の段階表)

 

情報活用の過程に働く能力

主な活動の観点

情報を収集する能力

目的や意図に応じて必要な情報を検索したり収集したりする力

  相手意識,目的意識 

収集の観点 

聞き取り(インタビュー,アンケート) 

   読み取り(本=図鑑,辞典)

(資料=絵,写真,新聞,テレビ,

VTR,インターネット)

   自然体験,社会体験

   観察,実験,見学,調査

   記録(視写,絵,図表,メモ)

情報を分類・整理する能力

収集した情報の価値をとらえたり,観点をもって整理したりする能力

   相手意識,目的意識 

   分類・選択の観点

   比較,順序

   分類,選択,関係付け(色付箋,色カード)

   整理(図表)

   記録,保存(ファイル,データベース)

情報を創る能力

発信する内容を発想したり,表現内容を明確にしたりして,情報を伝える構想を立てる力

   相手意識,目的意識

   場面,状況意識

   方法意識

   選択,関係付け

   主題,要旨の明確化

   着想,発想,構想

   構成(序論→本論→結論,起承束結,起承転結,演繹的展開,帰納的展開)

   推敲

情報を伝える能力

 

 

 
表現方法・手段を工夫し相手に分かりやすく伝えたり,その結果を振り返ったりする力

   相手意識,目的意識

   場面,状況意識

   方法意識

   文章表現(手紙,礼状,依頼状,新聞,感想,説明,記録,報告,意見)

   音声表現(発表,スピーチ,説明,対話,討論,パネルディスカッション)

   資料・機器の活用(B紙,パネル,OHP,本,パンフレット,リーフレット,パソコン)

   評価意識

   処理,成果  

図表1 情報活用能力の段階表

 

 

この段階表をもとに,「小学校1・2年生,3・4年生,5・6年生,中学校1年生,中学校2・3年生」の5段階で指導内容を系統化している。

(系統表全体は,岐阜県教育センターホームページの研究紀要の項に記載してある。)

 

(2)情報活用能力を育てる単元の開発と単元構想の具体化

 児童生徒の実態を,「内容や学習活動に関する興味・関心・態度,既習の情報活用能力,既習の表現方法」でとらえるとともに,

@教材の内容・方法の価値をおさえる。

A理解領域と表現領域を単元に位置付ける。

B学習活動の目的を明確にし,必然性をもたせる。

C単元で身に付けさせたい情報活用能力をしぼる。

D総合的な言語活動にする。

等の観点から単元を設定した。

【実践事例】 

小学校4年生「体を守る仕組み」

理解領域の教材で人体の秘密を知った感動をもとに,学習した表現方法を生かして「自分の体をもっと知りたい。」「調べたことを分かりやすく発表したい。」という表現に対する願いをもたせた。児童の必要感から図書館の本を情報収集に利用することができた。その際,学校図書の分類番号を記入できるカードを活用したため,情報の出典を明確にするという情報活用能力を身に付けさせることができた。

小学校6年生「環境パンフレットを作ろう」

 環境問題や環境保全についての複数の教材群を情報源として活用することにより,児童の興味・関心に応じて環境問題についての理解を深めさせ,目的意識をもたせた。地域の人々に訴える説得力のある作文・パンフレットにするため,起承束結の構成で書くことにしぼり,起承束結4つの段階に合った情報カードを使用した。そのカードを情報収集から,分類,構成の段階まで一貫して活用したため,児童にとって分かり易く,作業も行いやすかった。

中学校1年生「平和への願いを伝えよう」      

教科書の戦争教材を使用した理解領域の学習の後,「火垂るの墓」のVTRの視聴を踏まえ,「火垂るの墓」のビデオのコマーシャルパッケージを作る表現領域の学習を位置付けた。この学習では,「映像情報を利用し易いようにメモすること」と,「目的に応じて多様な文種で表現すること」が必然性のある情報活用能力となった。

 

(3) 情報活用能力を育成する多様な学習活動の工夫

 (1)の情報活用能力を育てるための指導内容を踏まえ,色別カード・付箋紙の操作やプリントによって児童生徒の思考の仕方が発揮されるように意図し,操作を通して具体的に理解できるような学習活動を工夫した。

 

(4) 情報活用能力を育成する評価の工夫

情報活用能力は,前述のように「情報を収集する」「情報を分類・整理する」「情報を創る」「情報を伝える」という学習過程で育成される。よって,節目節目の情報活用能力の指導内容を確実におさえ,自覚させていくことが必要である。そのため,その過程ごとの児童生徒のプリントや自己評価表を使って評価(ポートフォリオ評価)することによって,情報活用能力を自覚させようとした。

 上記(2)〜(4)については,一連の具体的な実践で述べる。

【実践事例】

小学校6年生 「鼓笛・虎の巻を作ろう」

  相手意識,目的意識を持続させる

 本単元は,6年生が伝統的に取組んでいる鼓笛という児童の生活にある活動を組み入れ,必然性をもたせようとした単元である。今まで鼓笛の活動を通して身に付けたことや学んだことを虎の巻という形式で表現し,5年生への引継ぎ会で伝えていくという活動を通して,5年生に必要な情報を整理して伝えようとするものである。

単元の導入で,「鼓笛を見ていいなあと思うこと」「たいへんだなあと思うこと」「くわしく教えてほしいこと」を5年生に聞きに行かせることによって,相手意識をもたせることができた。加えて,「5年生の疑問を解消させることを虎の巻に書けばいい。」「分かりやすく,5年生の助けになる虎の巻を作ろう。」という目的意識ができた。児童が虎の巻の中で,5年生の質問に答えるコーナーを作ったのは,この活動があったからこそである。また,この段階で生まれた相手意識,目的意識は,情報活用能力育成の過程においても,授業の中で確認,強化することによって,児童が収集,分類・整理,構成をしたものを見直し,内容を広げたり深めたりする観点となった。〈研究内容2〉

  色別の情報収集カードを使用する

この授業は,全8時間計画の5時間目の情報分類・整理の段階であり,情報収集カードである「これはのせるぞカード」を使用した。このカードは,「見出し」「見付けた情報の要約」「情報源(自分の経験,6年生,5年生,その他)」の3つの項目からなるもので,それを利用させることによって「事実と意見を区別して要点をまとめる」「目的に応じ,情報を自分のものにする」「小見出しを付ける」といった情報収集の能力を駆使させることが出来ると考えた。

さらに,児童にこのカードを4色準備させ,原則として,「練習の仕方・こつ・心構え」に関する情報を水色のカードに,「動き方・こつ」を白色に,「演奏の仕方・こつ」を黄緑色に,「気持ち,心,学んだこと,よさ」を桃色にまとめさせた。そうすることによって,情報を分類・整理する活動に取り組む際に,「集めた情報を関係付けて選ぶ」「大見出しを付けて整理する」という分類・整理する能力を発揮させる支えにしようと考えた。

実際,児童は虎の巻に書くときに,「大太鼓の家での練習のやり方」「指揮者の動き,行動の仕方&こつ」など,分類・整理の段階で使用した大見出しで書きまとめ,グループで落ちや重なりがないようにまとめることができた。〈研究内容3〉

  国語ふりかえりカードを活用する

1時間の授業の学習ぶりや鼓笛に対する認識の深まり,授業で駆使したり身に付けたりした能力(情報活用能力)を振り返り,学習の成果と課題を自覚的にとらえる能力や態度を習慣化してほしいという願いから,毎時間プリントを使って自己評価を行った。この「国語ふりかえりカード」は,「態度,内容面,能力,仲間との学習,自己の成長(自信をもっていいといえること)」の5つを項目としている。ここに書かれた内容から児童の課題をつかむとともに,教師が意図的に児童生徒を指名する材料とした。そして,単元を通して情報活用能力や態度の高まりが見受けられた児童を認め励ます働きかけを意図的に行った。

前述の授業においては,情報の分類・整理の仕方に困っている児童の実態を自己評価からつかみ,「カードの分類・整理のこつ」を授業の課題とした。そして,こつに気付いている児童を意図的に指名して授業を進めた。授業後の自己評価には,「題が似ているカードを一応集めて中身を読み,違っていたら題を変更させることをしたら混乱しなかった。」など,この授業でねらった「集めた情報を関係付けて選ぶ」ことについて,学級児童の約4割が意識することができた。〈研究内容4〉

 

中学校2年生  「日本の伝統文化を紹介する」

  情報収集をさせてから課題化する

本単元では,生徒たちにAETに日本文化を紹介するという相手意識,目的意識をもたせ,日本人でありながら馴染みのない伝統文化を調べることに必然性をもたせようとした。この授業は,全12時間計画の5時間目,情報収集の段階で,「文献から自分に必要な情報を抜き出し,自分の言葉で書くこと」をねらいとしている。

実際に情報収集の活動を1時間行い,次の時間にそこで疑問に思ったことや困ったことを出し合い,見出しの付け方や,情報収集カードに抜き出すよい方法を見付けていく単元構成にすることにより,情報活用能力に必然性をもたせた。

情報カードに抜き出すよりよい方法としては,「全部書いてはいけないのだろうか。」という教師の投げかけに対して,生徒達は,次のように,目的に応じて抜き出す方法を考えることができた。

    大切な言葉をつないでまとめる。使いにくい言葉は似ている言葉に直す。

    自分の本当に調べたいことがはっきりするように,いろいろな方向から考え,大切なことを抜き出す。

    初めから百科事典の長い文章を読んで,それから大切なところを探すと,能率も悪いし,よく分からないので,初めに自分の目的を明らかにしておいて,それに当てはまるところでチェックしておき,その中から大切なことを抜き出す。  

〈研究内容2〉

  授業の導入で「私の力カード」を利用する

生徒たちは,図書館の文献を利用し,「情報収集カード」に書き込む学習を行った後,情報活用能力を自覚させるために,「分かったこと・出来るようになったこと」を記録する「私の力カード」で前時の学習を振り返っている。この授業の導入では,「私の力カード」をもとに,生徒との対話を通してそのよさを評価しながら進めた。

日ごろ,生徒たちは百科事典を利用することが少ない。前時,百科事典を利用した生徒の気付きから,その情報量の多さや,索引,目次を利用して調べることができることの便利さを確認することができ,百科事典を生徒が利用する情報源の一つとして位置付けることができた。

また,「相撲にはいろいろな技がある。びっくりした。」という生徒の記録を取り上げることによって,「調べる活動で生まれる驚きとか感動は,伝えようとする内容を決めたり伝えたりすることのもとになる。」ということを意義付け,分かる喜びを情報収集に対する意欲につなげることができた。実際の調査活動を振り返らせることで,情報の収集源を広げ,分かる喜びを意義付けることができたよい事例である。〈研究内容4〉

 

中学校2年生  「共に生きることは」

A市国際交流協会PR大作戦

  「共生」で教材と新聞記事を関連付ける

本単元は,教科書教材の「共に生きる」というテーマを発展させ,新聞記事,国際理解にかかわる地域の活動を取り込んで生徒たちが主体的に表現できるように意図した,総合的な言語活動単元である。情報活用能力としては,「必要な情報を得るために目的が明確な取材活動(特に,インタビュー)ができる」ことにしぼった。単元の流れを,次の a b c d のように,起承転結の構成にすることによって,教材と新聞記事の内容を発展させ,身近な活動に結び付けようとした。〈研究内容2〉

a

  日本の若者グループと外国人グループとの対立を発端とした一連の事件の新聞記事に対して,感想を出し合うことを導入とした。「かわいそう」「外国人と仲良くしなければならない。」と考えながらも,そのために何もしていない自分に気付く。

b

  教材「アジアの働く子供たち」を読み取り,文末「共に生きる日本人でありたいと思う。」という筆者の意見をおさえる。

c

  新聞記事「『共生』をさぐる地域社会」(ボランティアによる日本語教室,宗教と代替給食の問題)をもとに感想を出し合い,実際に何ができるかという気持ちをもたせる。

d

国際交流協会のビデオを見せ,A市の団体のために,全校に対してPRビデオを作る。

 

  身近な活動と結び付ける

PRビデオとは, A市民フェスティバルで行われた国際交流協会の活動を教師が撮影,編集した映像に,生徒たちが紹介の言葉を入れるというものである。映像だけでも,ある程度活動の様子は理解できるが,活動をしている人の思いや意図はとらえられない。それで,国際交流協会の発起人であるBさんに学校に来ていただき,インタビューした内容を加えて,伝えたい内容がよく分かるVTRにするのである。実際に発起人に来ていただき,映像では分からないことをインタビューすることは,必然性があり,生徒に緊張感を与え,現実に近い場に立たせることができた。〈研究内容2〉

  分からないことを本人にインタビューする

この授業は,全14時間計画の12時間目で,情報収集の段階である。「@相手の立場を尊重した適切なインタビューによって,A映像からは分からない情報についてインタビューすることができる。」ことをねらった。「@相手の立場を尊重した適切なインタビュー」については,「相手の立場や気持ちを大切にすること」「インタビューの手順・内容」などを書いた「ガイダンスプリント」を用意し,必要に応じて利用できるようにした。「A映像からは分からない情報についてのインタビュー」については,色別の付箋紙によって,「映像から分かる情報」,「映像から分からないのでインタビューで得なければならない情報」を分類して考え,分からないことのみインタビューすることができた。

Bさんの言葉に重みを感じた生徒たちは,映像のコメントの中に,Bさん役を登場させ,インタビューでの受け答えの場面を再現することによって,Bさんの思いが伝わるように工夫した。そのことは,同じようにインタビューを体験している生徒たちの共感を呼んだ。〈研究内容4〉

  インタビューの仕方を振り返る

インタビューは,音声言語活動が中心となり自己評価することは困難であるため,「学び合いカード」に仲間のよさを記録させ,それによって情報活用能力を意義付けようとした。評価表は,以下の通りである。

◇今日一番参考になったのは,

(           )の場面で

(           )君,さんから出された

(           )という意見・質問です。

理由は,(          )。

インタビューの後の話し合いで,生徒の一人は,「Cさんの『国際交流で一番大切にしていくことは何か。』という質問が参考になりました。私の用意した質問は,『何をやっているか,人数は何人か。』でした。私は,あまりそういうことを考えませんでした。」と発言した。発起人の思いを引き出すインタビューに価値があると気付いた発言である。教師は,同じような質問を考えていたDさんが,「Bさんの考えを教えてください。」と,インタビューの相手が答えやすくなる質問の仕方まで考えていたことを誉めた。必要な情報を得るためのインタビューの方法,相手のことを考えたインタビューの仕方を意義付けることができた。〈研究内容4〉

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5 研究のまとめ 

 一人一人が自分の思いや考えを豊かに表現できるようにするための単元を開発し,情報活用能力の育成を図る単元指導計画の作成と学習活動を工夫してきた。その結果,相手意識,目的意識などを大切にした題材を開発すること,情報活用の過程を踏まえて単元指導計画を作成すること,また,その過程で,情報活用の指導事項に沿って確実に手立てをうっていくことが大切であることが分かった。

特に,相手意識,目的意識を全過程において強調していくことによって,活動に対して意欲的になるとともに,収集の観点も明確になり,収集する内容に広がりや深まりが見られた。また,相手に分かる言葉を選んだり,目的に応じた構成になるよう工夫を加えたりする姿が見られた。

情報活用能力育成の過程で児童生徒によって生み出されたプリントや自己評価は,付けたい情報活用能力に対する児童生徒の実態があらわれるため,それをもとに学習過程を考えることによって,児童生徒の実態にあった手立てがうてることが分かった。また,児童生徒が見付け出した考えや工夫を付けたい情報活用能力にかかわらせて意義付けることができた。

今後,この情報活用能力は,「総合的な学習の時間」においても,発揮されることが期待される能力であり,国語科が果たす役割は大きくなるものと思われる。情報活用能力の指導内容と児童生徒の実態を考え合わせての指導内容の設定,地域や学校の活動と結び付けた単元の開発など,情報活用能力の過程を踏まえた意図的な実践が望まれる。

 


<発達段階に応じた情報活用能力を育成するための指導内容一覧表>

【参考文献】

エスメ・グロワート    鈴木秀幸 訳

「教師と子供のポートフォリオ評価」

論創社  1999

 

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